Illumina

NGSを利用した遺伝子の変異解析において、イルミナDRAGENTMなどの二次解析ソフトウェアは、FASTQファイルを入力として遺伝子変異(バリアント)をコールし、VCF形式で出力します(図1)。しかし、VCFファイル内の多数のバリアントを解釈するためには、アノテーションの付与からレポート作成までに多大な労力を要し、専門的なデータ解析の技能が求められてきました。

イルミナでは、バイオインフォマティクスの実務経験がない方でも、効率的かつ再現性高くヒトのバリアント解釈が行える三次解析ソフトウェアとして、「Emedgene1,2,3 と「Illumina Connected Insights4を提供しています(図1、表1)。これらの製品は、イルミナ発の人工知能(AI)技術(PrimateAI-3D 5およびSplice AI 6)を含む、臨床研究レベルのバリアントアノテーション(Illumina Connected Annotations)の付与から、文献情報やガイドラインをはじめとする多数のナレッジソースの集約、そしてレポート出力までの多くの工程について自動化を実現します。また、イルミナのNGS装置およびクラウドプラットフォーム(BaseSpaceTM Sequence HubIllumina Connected Analytics)と統合することで、ヒトDNA/RNAのシーケンスから、FASTQ/VCFファイルを経由したバリアント解釈レポートの作成まで、シームレスなパイプラインとしての運用を可能にします。

本ページでは、遺伝性疾患やがん・腫瘍学(オンコロジー)分野において、臨床データの解析やゲノム医療に携わる研究者を強力に支援する、これらのソフトウェアの特長をご紹介します。

図1. イルミナのバリアント解析フローとソフトウェアプラットフォーム

  Emedgene Illumina Connected Insights
用途 NGSで得られたヒトのバリアント情報(VCFファイル)のアノテーション、解釈、およびレポート作成
分野 希少疾患を含む遺伝性疾患研究 腫瘍学(オンコロジー)研究
特長
  • 自動化された説明可能なAIによる検出バリアントの高精度な優先順位付け
  • 関連論文やデータベースa、ラボ独自にキュレーションされたナレッジの情報を集約し、自動化されたACMG分類やエビデンスを提供
  • 搭載された二次解析バイプライン(DRAGEN)により、FASTQやBAM/CRAMファイルからの解析も可能
  • 柔軟なフィルタリング条件設定から日本語でのレポート作成などカスタマイズ性の高い自動化ワークフローの構築
  • 関連論文やデータベースb、ラボ独自にキュレーションされたナレッジの情報を集約し、自動化された発がん性分類やエビデンスを提供
  • 疾患ごとにがんのキー遺伝子やホットスポット、ゲノム全体の複雑な構造情報の可視化が可能

表1 「Emedgene」と「Illumina Connected Insights」の特長

a. Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)、ClinVar、gnomADなどの国際的なデータベースに加え、日本人特有のバリアント情報を含むJapanese Multi-Omics Reference Panel(jMorp)などを参照するカスタマイズが可能。

b. 10万人を超える世界中のユーザーから信頼されているThe Jackson Laboratory Clinical Knowledgebase(JAX-CKBTM)などオンコロジーに特化したナレッジソースを含む。

各ソフトウェアの詳細・レポート例(クリックで詳細が表示されます)

「Emedgene」は、希少疾患を含むヒトの遺伝性疾患研究を支援する三次解析クラウドソフトウェアです。全ゲノム(WGS)、全エクソーム(WES)、ターゲットパネルなどのアッセイに対応しています。また、二次解析パイプラインとして高いバリアントコール精度を誇るDRAGENを搭載しており、VCFだけでなく、FASTQ、BAM、CRAMファイルからも解析が可能です。日本国内の臨床研究者のお客様にもご好評いただいております

主な特長として、自動化された説明可能なAIにより、高精度なバリアントの優先順位付けを行い、疾患と関連性が高いと考えられるバリアントのリストを提供します(図2)。各バリアントには、AIの判断を説明する可視化情報が表示され、関連する文献や多数のデータベースソースへのリンクが含まれています。リスト化されたバリアントには自動でAmerican College of Medical Genetics(ACMG)分類が適用され、研究者間での解釈の一貫性を向上させます(図3)。さらに、各ラボやワークフローに合わせたフィルタリング条件の設定や、ロゴなどを含むオリジナルテンプレートによるレポート作成(図4)など、標準操作手順書(SOP)に基づいた柔軟なカスタマイズが可能です。

図2 Emedgene: AIによってバリアントを優先順位付けしてリスト化

図3 Emedgene: バリアントをACMG分類に従い自動的に分類

図4 Emedgene: 作成されたレポートの一例

「Illumina Connected Insights」は、ヒトのがん研究・オンコロジー研究を支援する三次解析ソフトウェアです。クラウド版のほか、DRAGENオンプレミスサーバー版の提供があります。腫瘍組織または液体生検を用いた解析や、血液学的悪性腫瘍の検査などで得られたVCFファイルを処理可能で、腫瘍のDNA(WGS、WES、パネル)やRNA(WTS)サンプルから得られる特徴的なバリアントタイプにも広く対応しています。また、腫瘍変異負荷(TMB)、マイクロサテライト不安定性(MSI)、ゲノム不安定性スコア(GIS)など、ゲノムワイドなバイオマーカーを利用した相同組換え修復欠損(HRD)の評価も行います。

主な特長として、バリアントのフィルタリング、発がん性分類やナレッジソース情報を統合したエビデンスの提示(図5)、そしてレポート作成(図6)までの多くの工程の自動化を実現します。ナレッジソースには、オンコロジーに特化したJAX-CKBTM、OncoKB、Clinical Interpretation of Variants in Cancer(CIViC)をはじめとした多数のデータベース情報のほか、LitVar 2.0やMastermindなどの論文検索ソースが含まれており、検査、治療、予後、クリニカルトライアルに関連する知見を提供します。また、強力なデータ可視化機能を有しており、信頼性の高い解釈をサポートします(図7)。

図5 Illumina Connected Insights: ガイドラインに基づきバリアントの発がん性を自動的にスコア化し、エビデンスとともに提示

図6 Illumina Connected Insights: 作成されたレポートの一例

図7 Illumina Connected Insights: ゲノム構造、DNAおよびRNAのカバレッジ、バリアントアリル頻度(VAF)、融合遺伝子などを可視化

参考資料

  1. Emedgeneパンフレット(ご利用いただいたお客様の声)
  2. Emedgeneデータシート
  3. Meng L, Attali R, Talmy T, Regev Y, Mizrahi N, et al. Evaluation of an automated genome interpretation model for rare disease routinely used in a clinical genetic laboratory. Genet Med. 2023 Jun;25(6):100830. doi: 10.1016/j.gim.2023.100830. Epub 2023 Mar 16. PMID: 36939041.
  4. Illumina Connected Insightsデータシート
  5. Gao H, Hamp T, Ede J, Schraiber JG, McRae J, et al. The landscape of tolerated genetic variation in humans and primates. Science. 2023 Jun 2;380(6648):eabn8153. doi: 10.1126/science.abn8197. Epub 2023 Jun 2. PMID: 37262156; PMCID: PMC10713091.
  6. Jaganathan K, Kyriazopoulou Panagiotopoulou S, McRae JF, Darbandi SF, Knowles D, et al. Predicting Splicing from Primary Sequence with Deep Learning. Cell. 2019 Jan 24;176(3):535-548.e24. doi: 10.1016/j.cell.2018.12.015. Epub 2019 Jan 17. PMID: 30661751.

略語一覧

AI: Artificial Intelligence, GIS: Genomic Instability Score, HRD: Homologous Recombination Deficiency, MSI: Microsatellite Instability, NGS: Next Generation Sequencing, VAF: Variant Allele Frequency, SOP: Standard Operating Procedures, TMB: Tumor Mutational Burden, WES: Whole Exome Sequencing, WGS: Whole Genome Sequencing, WTS: Whole Transcriptome Sequencing

上記製品の使用目的は研究に限定されます。
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