Infinium MethylationEPIC BeadChip kitを用いた効率的な網羅的メチル化解析


DNAメチル化解析にInfinium Methylation BeadChipを選択された要因は何ですか?

解析対象のCpG数とサンプルの数に応じてプラットフォームを使い分けています。遺伝子領域とその周囲のメチル化を多数例にわたって網羅的に解析したいときには、BeadChipがベストのアプローチであると考えています。メチル化率の定量性が高く、実験データの再現性も非常によいため、小さなメチル化の変化も鋭敏に検出したいときに特に有効だと思います。

MethylationEPICが従来品であるHumanMethylation450と比べて良くなったと感じられたのはどのような点ですか?

450Kは遺伝子プロモーター領域やCpGアイランドはほぼカバーされていましたが、Infinium MethylationEPIC ではその9割以上はそのまま踏襲され、さらにエンハンサー領域のプローブが増えていました。エンハンサーは細胞分化過程の発現調節に重要な領域であり、ENCODE計画などで明らかになった制御領域の情報を参考にプローブが追加されているので、癌研究のみならず発生分化研究の研究者にも大変有用なプラットフォームになったと思います。

MethylationEPICを用いてメチル化解析を行おうとしている研究者にアドバイスはありますか?

ヒトサンプルを用いてエピゲノム解析を行う研究者全ての方におすすめです。必要なDNAサンプルが250ngと少なくなったこともメリットになると思います。このプラットフォームで最初のスクリーニングを行った上で、さらにターゲットシーケンスあるいは全ゲノムシーケンスに展開することもできますので、全ゲノム解析を予定している場合にも最初に行うプラットフォームとしておすすめだと思います。

大木元明義 先生

東京大学先端科学技術研究センター
ゲノムサイエンス分野
永江 玄太 先生

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TruSight Cardioパネルを用いた遺伝性循環器疾患の初期スクリーニングと病態解明


TruSight Cardioを使いたいと思われたのはなぜですか?

遺伝性循環器疾患の1つである心筋症では拡張型心筋症と拡張相肥大型心筋症、左室緻密化障害、不整脈源性右室心筋症などの表現型がオーバーラップすることが少なくありません。また、それらの原因遺伝子もサルコメア構成蛋白をはじめ多数の遺伝子が報告され、さらに複数の原因遺伝子変異をもつと重症化することも報告されています。サンガー法による既知の変異を中心としたシーケンスでは、極めて効率が悪いため、MiSeqを用いた TruSight Cardio パネル解析(遺伝性循環器疾患17疾患,174遺伝子,0.572 Mb)を利用したいと思いました。

TruSight Cardioの利点は何だと思われますか?

遺伝性循環器疾患の既知の候補原因遺伝子をほぼカバーできているため、第一段階としての遺伝子変異スクリーニングを容易にできることだと思います。また、原因遺伝子の検出(推定)と同時に他の循環器疾患の遺伝子も同時に解析できるため、それらの遺伝子変異・多型(rare variants)の表現型への影響も評価できる可能性があります。私はMiSeqの使用は初めてで、膨大なデータのフィルタリングに大きな不安がありましたが、無料で使用できる変異解析ソフト(VariantStudio)は初心者でも容易に使用することができました。また、イルミナ・サポートウェビナーでe-learningも利用できます。ユーザーのレベル(初心者・中級・上級)にあわせたタイトルがupされており、サポート体制もとても充実していると思います。

実際にTruSight Cardioで得られた結果はいかがでしたか?

初期24サンプルの解析結果は、カバレッジ(20x)が97.66%と満足のいく結果が得られました。 VariantStudioを使用して、アジア人1%未満でフィルターをかけると原因遺伝子の可能性がある8-3個の変異が抽出できています。 これらを即、原因遺伝子とは断定できませんが、初期スクリーニングまた病態解明のうえでたいへん有益な結果が得られていると思います。

大木元明義 先生

愛媛大学医学部附属病院
循環器病センター 准教授
大木元明義 様

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NGSによるHLAタイピングがAmbiguityを克服


TruSight HLA シーケンスパネルで得られた結果は従来法と比較するといかがでしたか?

TruSight HLA シーケンスパネルを利用して、予想どおり、すばらしい結果が得られました。現状で使用している蛍光ビーズ法(Luminex 装置で測定する PCR-SSO 法)は正確性及び再現性において極めて信頼性が高いのですが、その判定結果の裏に Ambiguity と呼ばれる HLA 型判定不確定となる組み合わせが数多く潜んでいます。これまで、血清学的タイピングの時代から、常に Ambiguity に苛まされ、それと戦ってきた経緯から、ついに、NGS という最強のツールで Ambiguity を解消した結果が目の前に現れた時は、本当に感動しました。

TruSight HLA シーケンスパネルの利点は何でしょう?また、期待していることは何でしょう?

言うまでもなく、NGS を利用すれば、DNA1 分子由来の配列データが取得できること、また、Long Range PCR でイントロンを含め HLA のほぼ全領域を対象にしているところにあります。つまり、クローニングせずに Ambiguity 地獄から開放されるという利点が全てでしょう。さらに、キット化されたことで、今後研究ベースから検査試薬に発展する第一歩になったと思います。TruSight HLAシーケンスパネルで誰でも確実な結果を得るには、ライブラリー調製の簡略化(自動化など)、日本人集団 HLA データベースの拡充、解析アルゴリズムの最適化など幾つかの解決すべき問題点が残りますが、必ずやクリアされることを期待しています。

今後どのように TruSight HLA シーケンスパネルを利用されるご予定ですか?

当研究所には、造血細胞ドナーや献血者を対象に蛍光ビーズ法で判定できないサンプルが集積されます。これは、年間数万件 HLA タイピングされた中から約 200 件に 1 件の頻度で存在します。現状では、クローニングをしてからサンガー法で確認しているのですが、TruSight HLA シーケンスパネルを利用すれば、NGS の特徴を生かし、クローニング無しで確実な結果が期待できます。ゆくゆくは、全数検査も視野に入れています。 価格面については、数年前の NGS アッセイから考えると、現実的な価格帯に到達しつつあると思います。メーカーへの要望としては、TruSight HLA シーケンスパネルのみならず、インデックス・キット、シーケンス試薬セット、消耗品などトータルで価格を語っていただくことが、ユーザー目線というものであると思います。

NGS で HLA 解析を行おうとしている研究者にアドバイスはありますか?

現状では、1) ライブラリー調製が非常に大変であること、2)PCRドロップアウトやアレリック・インバランスの可能性がゼロではないこと、3)HLA データベースを参照するフェージングでは Ambiguity が完全に解消されないことを理解した上で取り組んでいただきたいと思います。上記、2) と 3) は頻度・確率の問題であり、年間数万件 HLA タイピングする我々にとって無視できないことですが、通常使用では、ほとんど問題ないと思われます。

中島文明 先生

日本赤十字社 血液事業本部中央血液研究所 研究開発部
参事  中島文明  様
参事付 清水まり恵 様

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TruSight Oneで疾患関連遺伝子変異解析がより簡便に


先生のご研究にTruSight One シーケンスパネルを使いたいと思われたのはなぜですか?

TruSight One シーケンスパネルは臨床に関与した主要な遺伝子を網羅していることから、疾患や症状から責任遺伝子候補が複数想定される場合など、簡便にスクリーニングしてシークエンスできる。特に、エクソン数が多くホットスポットが無いような場合や、配列変異だけでなく欠失や重複変異もある程度の頻度であり得る場合などは、よい適応になる。

TruSight One シーケンスパネルの利点は何でしょう?

疾患と関連している遺伝子のため、変異の解釈がエクソームと比較して楽である。また適度にゲノムワイドに分布して多数のシークエンスをカバレッジしていることから、CNVを算出できる。このため、疾患や症状によって、TrusightOne -> CNVの範囲決定と確認のためにアレイ という流れが有効になっている。

井本逸勢 先生

徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部人類遺伝学分野 教授
井本逸勢 先生

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臨床エクソームパネルTruSight Oneの小児臨床研究における活用方法


先生のご研究にTruSight One シーケンスパネルを使いたいと思われたのはなぜですか?

総合病院(小児病院)で臨床研究を行うためには、様々な遺伝病に対応できるゲノム・遺伝子解析体制が必要。全エクソーム解析が理想であるが、自施設内で臨床研究として行うにはコストや解析装備にも限界があり、検出された変異のvalidationの問題も残る。TruSight One 以前に採用していたパネル解析が臨床研究の現場できわめて有用であることを経験していたので、パネル解析の拡張版として採用した。

TruSight One シーケンスパネルの利点は何でしょう?

1)コバリスや高出力のシーケンス機器を必要とせず、検査室(研究室)単位で使用できること
2)搭載遺伝子リストが通常の臨床研究で必要な遺伝子をほぼ網羅していること
3)比較的均一に設計されているので、CNV変換後のデータも安定していること
4)症例ごと(あるいは家系単位)で解析が可能であること(通常の疾患群単位のパネル解析では、コストダウンを図るために症例を多数集約して解析する必要があるが、総合病院ではそれは現実的ではない。同一疾患症例を多数集約するまでに相当の時間がかかってしまう。)。

黒澤健司 先生

地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 遺伝科
黒澤健司 先生

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