生殖細胞系列全ゲノムシーケンス精度のさらなる進化: NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4とDRAGEN v4.5が、最も困難なゲノム領域を含む解析結果を改善

NovaSeq Xシリーズソフトウェアv1.4のアップデートに関する先日のブログでは、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4のリリースによって実現されたシーケンス品質、ユーザビリティ、およびワークフローの柔軟性の向上についてご紹介しました。FASTQ品質指標およびデータ全体の一貫性における明確な改善を確認し、DRAGEN解析パイプライン v4.4を用いた全ゲノムシーケンス(WGS)の生殖細胞系列スモールバリアントコールの結果も併せてご紹介しました。

本ブログでは、この検証をさらに発展させ、NovaSeq Xシリーズのソフトウェアv1.4と最新のDRAGEN解析パイプラインv4.5.4を組み合わせて評価した結果をご紹介します。これにより、バリアントコール精度がさらに向上し、従来は解析が困難であったゲノム領域においても改善が確認されました。

シーケンスの向上からバリアントコール精度の向上へ

NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4アップデートによって観察された改善の主な要因の一つは、シーケンスプロセスの継続的な最適化です。これには、シーケンスレシピ、クラスタリング、および一次解析の強化が含まれます。

NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4では、温度制御および流体制御工程の最適化を含むシーケンスレシピの改良に加え、クラスタリングの改善によって、よりゲノム純度が高く堅牢なクラスター形成を促進しています。これらの変更によりシグナル対ノイズ比が向上し、シーケンスサイクル全体を通じて、より一貫した塩基品質が実現しました。

同時に、一次解析の強化によってシグナル処理性能も向上しており、とくにホモポリマー領域など、正確なシーケンスが難しい領域での性能改善に寄与しています。

これらの改善が相まってシステム由来のエラーが低減され、データの一貫性が向上しました。その結果、下流解析に使用される入力データの品質が向上し、ゲノム全体にわたる正確なバリアント検出の基盤がさらに強化されます。

最新のDRAGENパイプラインによるバリアントコールの評価

前回のブログでは、DRAGENパイプライン v4.4を用いたNovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4の全ゲノムシーケンス(WGS)における生殖細胞系列スモールバリアントコール結果を紹介しました。イルミナは、バリアントコールの精度と一貫性をさらに向上させるため、二次解析の継続的な改良を進めています。

DRAGEN v4.5.4の最新アップデートでは、この取り組みをさらに発展させ、サンプルごとのパーソナライズされたアラインメントおよびバリアントコールがデフォルトで実行されるようになりました。これにより、バリアント検出が最適化されるとともにジェノタイピング性能も向上し、偽陽性と偽陰性の双方が低減されます。

これらの進歩を反映するため、本解析ではNovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.3およびv1.4で取得したデータセットの両方をDRAGEN v4.5.4で解析しました。これにより、一貫した条件下で比較を行いながら、シーケンス技術と解析技術の改善が下流解析の精度向上に与える複合的な効果を評価しました。

実験デザイン 

NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4がWGSの生殖細胞系列バリアントコールに与える影響を評価するため、図1に示す実践を設計しました。

図1:実験デザイン。HG001~HG005サンプルはTruSeq PCR-Free 450ライブラリーを用いて調製し、NovaSeq X 10Bフローセルでシーケンスしました。得られたデータはソフトウェア v1.3およびv1.4の両方で処理した後、35× の生データカバレッジにサブサンプリングし、DRAGEN v4.5.4で解析しました。結果は、HG002についてはNIST T2TQ100-v1.1-v0.019真値セット、HG001~HG005についてはNIST v4.2.1真値セットを用いてベンチマーク評価しました。

NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4によるスモールバリアントコール精度の向上

図2は、NovaSeq Xシリーズソフトウェアv1.3からv1.4[1]に移行したシーケンスデータをDRAGEN v4.5.4で処理した場合の、スモールバリアントコールの総エラー数(偽陽性+偽陰性)が減少したことを示しています。

HG002についてNIST T2TQ100真値セットを用いて評価したところ、総エラー数は78,860(ソフトウェアv1.3)から48,923(ソフトウェアv1.4)に減少し、約38%の改善が確認されました。これは、偽陰性が53,435件から32,848件に減少し、さらに偽陽性が25,425件から16,075件に減少したことによるものです。

これらの結果は、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4におけるシーケンス性能の向上が、より正確なバリアント検出に直接結び付いていることを示しています。全ゲノム解析において、バリアントの見逃しと誤検出の両方が大幅に削減されました。

図2:HG002(NovaSeq X 10B、TruSeq PCR-Free 450)のWGS生殖細胞系列スモールバリアントコールエラー数(偽陽性+偽陰性)。DRAGEN v4.5.4による解析結果では、NovaSeq Xシリーズ ソフトウェア v1.4により、v1.3と比較してエラー数が大幅に減少しました。

重要なのは、これらの改善が単一サンプルに限られないことです。 TruSeq PCR-Free 450ライブラリーを用いて10BフローセルでシーケンスしたHG001~HG005の各サンプル(生データカバレッジ35×)において、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4は、確立された真値セットに対して高い性能と一貫性を維持しました。NIST v4.2.1真値セットを用いた評価では、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.3からv1.4へのアップグレードにより、5つのサンプルすべてでスモールバリアントコールの総エラー数(偽陽性+偽陰性)が一貫して減少しました。総エラー数は、ソフトウェア v1.3では5,146~8,227件であったのに対し、ソフトウェア v1.4では3,869~8,145件となり、1.0%~31.3%の低減が確認されました。。

HG002でT2TQ100真値セットを用いて観察された約38%の改善(図2)が、v4.2.1真値セットを用いたHG001~HG005全体での約18%の改善(図3)より大きかった理由は、使用した真値セットの構成の違いによるものです。T2TQ100ではホモポリマーが多く含まれる領域の割合が高く、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4は、そのような領域で特に大きな性能向上を示します。これは次のセクションで詳しく説明します。

図3:HG001~HG005(NovaSeq X 10B、TruSeq PCR-Free 450)のWGS生殖細胞系列スモールバリアントコールエラー数(偽陽性+偽陰性)。DRAGEN v4.5.4で解析した結果、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4では、v1.3と比較してエラー数が大幅に低減しました。

ホモポリマー領域で最大の改善を実現

データをさらに詳しく見ると、これらの改善が特に顕著に現れている領域が明らかになります。図4に示すように、ホモポリマー領域(10 bp以上) において大幅な改善が確認されました。こうした領域は、従来からシーケンスエラーやバリアントコールエラーの影響を受けやすいことで知られています。

この条件下では、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4により、偽陽性と偽陰性を合わせた総エラー数が、ソフトウェア v1.3と比較して50%以上低減しました。これは、HG002におけるバリアントコール精度が大幅に向上したことを示しています。

これらの改善は、シーケンス性能の向上および最新のDRAGEN解析アップデートによる効果と一致しています。システム由来のエラーを低減し、シーケンスサイクル全体にわたってより一貫した塩基品質を実現することで、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4は、ホモポリマー領域におけるバリアント検出精度を向上させます。このような領域では、従来はエラーパターンによって真のシグナルが見えにくくなることがありましたが、v1.4では、より正確なバリアント検出が可能になりました。

図4:HG002(NovaSeq X 10B、TruSeq PCR-Free 450)におけるWGS生殖細胞系列スモールバリアントコールエラー数(偽陽性+偽陰性)。DRAGEN v4.5.4による解析では、ホモポリマー領域において、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4へのアップグレードによりエラー数が大幅に減少したことが示されました。

シーケンスと解析が性能向上を支える

高精度なバリアントコールを実現するには、高品質なデータと高品質な解析の両方が不可欠であり、これらを同時に進化させる必要があります。NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4では、シーケンスデータの品質と一貫性が向上しました。具体的には、シグナルの向上、システム由来エラーの低減、および塩基品質の一貫性向上が実現されています。一方、DRAGEN v4.5.4では、モデリング、候補バリアント生成、およびフィルタリングの改善により、これらのデータからより正確なバリアントコールを実現します。今回の結果は、シーケンス技術と解析技術が並行して進歩することで実現可能となる性能の向上を示しています。

まとめ

NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4アップデートによる改善は、シーケンス指標の向上にとどまらず、下流解析の結果にも明確に反映されています。最新のDRAGENパイプライン v4.5.4で解析した場合、NovaSeq Xシリーズソフトウェア v1.4のデータにおいて、以下の改善が確認されました。

  • 生殖細胞系列スモールバリアントコールエラーを最大38%削減

  • ホモポリマー領域(10 bp以上)において50%以上のエラー削減

  • サンプル間で一貫した精度の向上

これらの成果は、シーケンス技術と解析技術を継続的かつ並行して進化させることの価値を裏付けています。その結果、これまで特に解析が困難であったゲノム領域においても、高い信頼性を備えた全ゲノムシーケンス解析が可能になりました。

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参考文献

  1. TruSeq PCR-Free 450ライブラリーを用い、35倍の生カバレッジで10Bフローセルから生成されたFASTQ。