韓国では、2010年から個別化医療の実現にむけて研究費等での支援を提供するようになり、日本の厚生労働省と総務省にあたる韓国の保健福祉部および科学技術情報通信部は、2021年までの5年間に個別化医療の実現に630億ウォンを投資するとしています。(右図に記載の3分野、7イニシアティブ 参考文献1より)
最初のステップとして、がんの診断と治療および病院の情報システムを個別化医療へ対応させることに取り組んでいます。例として韓国疾病管理・予防センターでは、大規模コホートのためのバイオバンクを立ち上げ、ナショナルバイオバンクでは67万人の検体を保管し、25万人のコホート研究では10万人のゲノム情報を収集する予定と発表しました。
2017年から、次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネルが保険償還されるようになりました。保険償還は遺伝子パネルのサイズによって、レベル1とレベル2にクラス分けされています。(参考文献2より)
一方で韓国においては、アメリカの Lab Development Test に該当する仕組みが認可されており、RUO (研究専用)試薬からなるパネルを用いた場合でも、認可された施設での実施など必要要件を満たせば保険償還の対象となります。
現在、次世代シーケンサーとして医療機器承認を受けた機器が複数(イルミナ製品は MiSeq Dx および NextSeq 550Dxシステム)手に入る状況です。NGS本体は Dx機器を使用しつつ、パネルは RUO製品を LDT の枠組みでクリニカルシーケンスに使用するというケースも多いようです。
また、大規模な集団ゲノムシーケンスのプロジェクトとしてはまだ公式発表には至っていませんが、”My DNA” (仮) というプロジェクトが議論されているようです。これは5年間で10万人の全ゲノムを解析しようというプロジェクトで、順調に進行した場合には、10年間で100万人のプロジェクトへ拡大する可能性もあるようです。今のところ、公式発表を年内に予定しているとのことでした。(参考文献3)
今後、韓国におけるクリニカルシーケンスの社会実装がどのように広がっていくのか、期待をもって見つめていければと思います。