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ゲノムシーケンスの障壁を取り除くための新たな取り組み

エビデンスが増加するにつれ、イルミナは支払者と協力して、遺伝性疾患患者の利益となるシーケンスの幅広いカバレッジを実現します

ゲノムシーケンスの障壁を取り除くための新たな取り組み
2024年5月13日

Genomic Medicine誌に発表された新しい論文では、希少遺伝性疾患の疑いがある人々のゲノムシーケンスへのアクセスを拡大するために世界中で進められてきた取り組みの進捗状況が詳しく説明されています。このテクノロジーにより、これらの健康状態の多くが、出生時または幼児期に診断できるようになります。このテクノロジーを利用することで、確定診断に至るまでの時間を短縮し、不要な医療処置や検査を防ぎ、このような答えを探すために家族が受ける精神的・経済的負担を軽減することができます。

従来、臨床医は特定の遺伝的疾患を診断するために、カスタマイズされた一連の医療検査を行う傾向がありました。こうしたターゲット化した取り組みが失敗した場合にのみ、疾患の根本原因を理解するために、エクソームまたはゲノムシーケンスのような包括的でターゲット化されていないツールに目を向けることになります。「エクソームまたはゲノムシーケンスの利用率は非常に低い傾向にあり、医療従事者がこれらの検査をあまり処方していないことを意味します」と、イルミナの医療経済 & アウトカム研究ディレクター、Kalliopi Trachana氏は言います。

文献レビューによると、ゲノムシーケンスによる診断を受けた患者の最大77%が臨床管理の変更を経験していることが示されており、1-8これは、ゲノムシーケンスを第一選択の検査として用いることが効率的であり、転帰の改善につながる可能性があることを示唆しています。さらに、研究では、第一選択のゲノムシーケンスが、希少疾患の診断にも費用対効果の高いアプローチであることが示されています。1,3,4

希少疾患の疑いがある患者を診察した場合に、医師がこれらの検査をすぐに行わない理由については、Trachana氏は「鶏が先か卵が先か」のようなものだと述べています。これらの検査が広く利用できない、保険の対象外、またはその他の管理上の障壁によって制限されている場合、医療従事者は患者の治療を遅らせないために別の手段を用いることになります。

この新しい論文は、臨床検査室のコンソーシアムである「Medical Genome Initiative」のメンバーによって執筆されました。このコンソーシアムは、世界中でゲノムシーケンス検査のベストプラクティスを確立し、その普及を促進することを目的としています。Trachana氏は、この論文について「希少疾患診断のためのシーケンスをサポートできるさまざまなステークホルダーに向けた行動要請」であると述べています。このイニシアチブのメンバーであるイルミナは、保険会社、政府、臨床医、患者、その他エコシステムに関わる人々に、シーケンスが提供する価値を実証する一助となっています。

米国の保険会社は、遺伝性疾患の兆候がある患者の費用を負担することで、ゲノムシーケンスへのアクセスをますます拡大しています。現在、米国では5,000万人以上が対象となっており、英国とドイツでは日常的なケアの一環として実施されています。また、その他の欧州諸国でも、国家診療報酬体系に組み込まれているか、まもなく導入される予定です。著者らは将来的に、政策実施の優先順位付け、ユニバーサルゲノムシーケンスカバレッジを支援するための資金提供、医師や患者が直面する管理上の障壁の軽減、臨床医にシーケンスの有用性についての教育、ゲノム情報に基づく治療の有用性に関する研究発表の継続を提案しています。

Trachana氏は、ゲノムシーケンスを利用できない低中所得国では、エクソームシーケンスに移行しつつあると指摘しています。エクソームシーケンスでも、貴重な情報を引き出すことは可能です。「これは、人々や医療システムが、以前よりも速いペースで次世代シーケンサーを推奨していることを示しています」

今後、イルミナは世界中の公的および民間の保険会社と連携し、エクソームまたはゲノムシーケンスを保険の対象に含めるよう働きかけていきます。

「私たちは転換点にいます」とTrachana氏は述べています。「今後5年間で、米国およびその他の国々において、ゲノムカバレッジの対象範囲拡大が見込まれると思います。イルミナは、医療システムが転換期を乗り越え、ゲノムシーケンスへと移行していくのを引き続き支援していきます」

参考文献

1. Abul-Husn NS, Marathe PN, Kelly NR, et al. Molecular diagnostic yield of genome sequencing versus targeted gene panel testing in racially and ethnically diverse pediatric patients. Genet Med. 2023;25(9):100880. doi:10.1016/j.gim.2023.100880
2. Bick D, Fraser PC, Gutzeit MF, et al. Successful Application of Whole Genome Sequencing in a Medical Genetics Clinic. J Pediatr Genet. 2017;6(2):61–76. doi: 10.1055/s-0036-1593968
3. Dimmock D, Caylor S, Waldman B, et al. Project Baby Bear: Rapid precision care incorporating rWGS in 5 California children’s hospitals demonstrates improved clinical outcomes and reduced costs of care. Am J Hum Genet. 2021;108(7):1231–1238. doi:10.1016/j.ajhg.2021.05.008
4. Dimmock DP, Clark MM, Gaughran M, et al. An RCT of Rapid Genomic Sequencing among Seriously Ill Infants Results in High Clinical Utility, Changes in Management, and Low Perceived Harm. Am J Hum Genet. 2020;107(5):942–952. doi:10.1016/j.ajhg.2020.10.003
5. Farnaes L, Hildreth A, Sweeney NM, et al. Rapid whole-genome sequencing decreases infant morbidity and cost of hospitalization. NPJ Genom Med. 2018;3:10. doi:10.1038/s41525-018-0049-4
6. Kingsmore SF, Cakici JA, Clark MM, et al. A Randomized, Controlled Trial of the Analytic and Diagnostic Performance of Singleton and Trio, Rapid Genome and Exome Sequencing in Ill Infants. Am J Hum Genet. 2019;105(4):719–733. doi:10.1016/j.ajhg.2019.08.009
7. The NICUSeq Study Group. Effect of Whole-Genome Sequencing on the Clinical Management of Acutely Ill Infants With Suspected Genetic Disease: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr. 2021;175(12):1218–1226. doi:10.1001/jamapediatrics.2021.3496
8. Maron JL, Kingsmore S, Gelb BD. et al. Rapid Whole-Genomic Sequencing and a Targeted Neonatal Gene Panel in Infants With a Suspected Genetic Disorder. JAMA. 2023;330(2):161–169. doi:10.1001/jama.2023.9350