2023年10月5日
2016年、Iara Mantiñán Bua氏は、エジプトやカタールなどの紛争後の地域でフリーランスジャーナリストとして働いていました。彼女が右足にある塊に気付いたのは、2013年の軍事クーデターの後、何年もの間エジプトの政治についての記事を担当していた時でした。Bua氏は当初、蚊に刺されたものと考え、これを無視していました。「乳房に腫瘤があったなら、非常に心配することでしょう。でも足ではどうでしょうか? それが重要なことだとは思えませんでした。」と彼女は振り返ります。
その年のクリスマスに、彼女は母国であるスペインの家族を訪ねました。医師である彼女の名付け親がその塊に触れ、病院に行く必要があると言いました。足のしこりは悪質な蚊に刺された跡ではないようでした。
名付け親の提案を受けて、Bua氏は病院に行きました。さまざまな専門家の診察を受けた後、そのうちの1人から結合組織の非常に希少ながんである骨外性粘液型軟骨肉腫であると正式な診断を受けました。Bua氏がこのニュースを受け取ったのは31歳の時でした。
この診断は文字通り、彼女の人生を大きく変えました。外科医が脚の手術を行って腫瘤を取り除きましたが、1年後の2017年にがんが再発しました。それまでに、彼女は働くことができず、障がい者年金で生活していました。
「大学では、専門家になる方法、自分の分野で前進する方法を教えてくれます」、とBua氏は語ります。しかし、がんに罹患して障がいを負った場合の自己改革の方法を教えてくれるわけではありません。」
Bua氏は患者として、担当医の病状に関する知識が限られていることを知りました。答えを見つけるのは彼女次第でした。幸いにも、彼女はジャーナリズムの分野で得た調査とインタビューのスキルを活用することができました。やがて、彼女はスペインには肉腫を専門とする病院が7件あることを発見しました。さらに、スペインの医療制度は分権化されており、すなわち、ある病院が臨床試験を実施していたとしたら、その情報を得るには直接病院に直接尋ねる他はありませんでした。「文字通り、ドアをノックしなければならないのです」、と彼女は訴えます。Bua氏は多くのドアをノックしました。
答えを探し求めながら、Bua氏は肉腫について学んだことをすべて自分のブログやYouTubeチャンネルで共有し始めました。間もなく、多くの患者が彼女に連絡をとってきました。バルセロナに住むある女性は、他の肉腫患者を探していましたが、その甲斐もなく18歳の息子が亡くなるまでBua氏のブログを見つけられませんでした。(この女性はRaquel Rubio氏といい、後に9人の患者の経験をまとめた本、El Sarcoma Día a DíaでBua氏と協力することになりました。)
調査を通して、Bua氏は患者を標的治療にマッチさせる可能性のあるがんバイオマーカーを同定するためのゲノムシーケンスの重要性について発見しました。強い決意と長い探求の後、彼女はBua氏の住む場所から900 km以上離れた国の反対側に住む肉腫の専門家で病理医の名前を突き止めました。彼女は、セビリアにある大手病院の解剖病理学ユニット長であるDr. Enrique de Álavaに連絡を取るため、できる限りのことをしました。2020年、ついに、Dr. Álavaの協力を得て、彼女は次世代シーケンス(NGS)用の腫瘍組織検体を提出することができました。この解析では、通常細胞代謝に関与する2つの遺伝子、PI3KとIDH2に変異があることが明らかになりました。これにより、彼女は標的治療を受けることができ、それ以来、この疾患を安定させることができました。
間違いなく、このことはBua氏にポジティブな結果をとなりました。しかし、彼女は自分と同じような機知や決意がない他の患者について気がかりになっていました。それは、多くの患者から利用できるサポートがあまりないと聞いていたからです。Bua氏は、医療システムにソリューションを見つけることはそれほど難しいことではないと強く感じました。Bua氏は、自分が専門医療を受けるために取った措置をブログに記録すること以外に、患者をサポートするためのさらに大きな方法があるのではないかと考え始めました。
2020年、新型コロナウイルスによって世界が縮小し始めた頃、Bua氏は地元に別の肉腫患者がいることを知りました。美容師をしている彼女の叔母が、スペイン北西部のアコルーニャの近くにある小さな町で、肉腫を患っているお客を受け持った人がいるのを耳にしていたのです。Bua氏は、Carolina Castiñeiras Brandón氏という小規模事業のオーナーであるこの女性に、すぐに連絡をとりました。一連の会話の中で、二人は異なる肉腫のサブタイプを持つにもかかわらず、同じ変異を共有し、他の肉腫患者を助けたいという同じ情熱を持っていることを互いに知りました。当時、Brandón氏は地元の政治にも関わっていたため、その経験が彼らの支援活動に役立つことになるでしょう。
彼らは、患者主導の非営利団体ASARGA(Asociación Sarcomas Grupo Asistencial)を設立しました。この団体は、疾患に対する認識を高めるだけでなく、患者や家族に症例管理サービス、専門的なガイダンス、サポートを提供しています。最も重要なのは、患者さんに然るべき治療を受けさせるようにする目的で、ASARGAが適切な医療センターを見つけるのを手助けしていることです。これは、彼らがすべての肉腫患者の権利であるべきだと考えているからです。Bua氏の見解:個人では恐らくシステムの変化に影響を与えることはできませんが、組織になるとこれができるかも知れません。
ASARGAは現在、NGSを肉腫患者の標準治療の一部にできるように、その臨床パスウェイに投資をするようスペイン政府に働きかけています。希少で多種多様な肉腫は診断が困難であるため、これらの患者への新規治療の選択肢が大きく進歩するのを妨げています。NGS、特に包括的ゲノムプロファイリング(CGP)または全ゲノムシーケンス(WGS)は、定期診断と治療選択を最適化する上で重要なツールとなります。CGPとWGSは、腫瘍のDNAに見られる変化に基づき、肉腫患者の標的治療を見つける上で役立ちます。
彼らはその経験に基づき、NGSのような投資は肉腫患者の生活の質を向上させ、最終的には、化学療法による副作用による費用のかさむ入院を防ぐことで、医療システムの費用を節約できると考えています。また、ASARGAは、一般的に国民皆保険政策の対象とならない肉腫患者のNGSおよび標的治療へのアクセスを改善するために、欧州連合レベルでの取り組みにも力を注いでいます。
イルミナは、寄付を通じてASARGAを支援しています。「NGSテクノロジー、特に包括的なゲノムプロファイリングと標的治療へのアクセスに対する認識を高めるASARGAの取り組みは、途切れることなく行われています。」と言うのは、イルミナのためにヨーロッパ、アフリカ、中東の全域で患者支援を率いているPiarella Peralta氏です。「彼らは、肉腫に対する最善の治療について一般の人々を教育するだけでなく、この患者集団の転帰を改善するための革新的技術の影響について、政府職員を含む他の利害関係者にも教育活動を行っています。」
Bua氏は、ASARGAが最大の可能性を実現できることを嬉しく思っています。「患者に関わる規制を検討する際には、全体像を把握する必要があります。」と彼女は意見を述べます。「これは、私たちの団体とイルミナのような企業が理解している力です。それはつまり、リソースと業界のサポートが必要だということです—それが無ければ、私たちは声の無いただのボランティアになってしまいます。」
Bua氏はイルミナの診断検査は受けていません。彼女は、包括的ゲノムプロファイリング(CGP)によるバイオマーカー検査の潜在的な利点の証言者として、自身のストーリーを共有しています。ある患者の経験から他のCGP症例の結果を予測できるものではありません。それは、さまざまな要因によって結果が違ってくるためです。他の症例では結果が異なる場合があります。