プレスリリース

全エクソームシーケンスの共同研究により、白質脳症の子供たちに新たな希望を

(当リリースは、Illumina Inc., が2016年5月9日付けで発表した英文プレスリリースを日本語に翻訳したものです。
プレスリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します)

Annals of Neurologyに論文発表を行った研究で、未解決の希少疾患事例を臨床的に診断

2016年5月9日サンディエゴ--(BUSINESS WIRE)—イルミナ(NASDAQ:ILMN)、Children’s National Health Systemおよびクイーンズランド大学(UQ)は本日、ゲノム内のすべての遺伝子を一度に調べる手法として全エクソームシーケンス(whole exome sequencing‐WES)を行い、平均8年間診断や回復がみられなかった白質脳症患者で42%の診断率が得られたことを明らかにしました。

白質脳症は、脳のさまざまな領域同士や、これらを脊髄と繋ぐ神経部が年齢と共に衰弱する進行性の疾患です。この疾患群は毎年7,000人に1人の割合で新生児に見つかっています。

「白質脳症の患者を対象とした全エクソームシーケンス」と題した本研究の結果は、Annals of Neurologyのオンライン版、またはこちらから論文の全文をご覧いただけます。本論文は同誌6月号にも収載の予定です(Volume 79, Issue 6)。

「世界中で3,500万人もの人々がこれらの疾患に罹患していることを考えると、「希少な」遺伝性疾患と呼ぶのはどこか語弊があります。」と話すのは、Children’s Nationalで行われるMyelin Disorders Programの指揮を執り、本研究の研究者リーダーでもあるAdeline Vanderver(M.D.)氏です。「私たちの研究では、次世代シーケンスを行うことで、脳の白質に影響を及ぼす極めて診断の難しい遺伝性疾患群を診断できることが明らかになりました。」

「この手法が持つパワーには、感激させられました。」とは、イルミナのScientific Research所長で共同研究者でもあるRyan J. Taft(Ph.D.)の弁です。「この研究で次世代シーケンスをベースとしたWESを行ったところ、劇的に診断率が上がり、診断までの時間も短縮されたのです。」

クイーンズ大学にあるInstitute for Molecular Bioscience Centre for Rare Diseases Researchから本研究に参加したCas Simons氏(Ph.D)は、「白質脳症が患者やその家族に与える影響は計り知れません。」「治療の選択肢を広げ、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を改善するためには、タイムリーに正確な診断を行うことが非常に重要です。」

100以上もの遺伝性疾患が中枢神経系の白質異常に関係しています。脂質の不導体層であるミエリンは、10以上の異なる化学物質で構成され、ミエリン鞘(髄鞘)は、電気的刺激が神経細胞を通ってスムーズに脳に伝わる際に重要な役割を果たします。白質ジストロフィーとして知られる遺伝性疾患の数々は、脳の白質の退化を進行させ、ミエリンに不可欠な化合物の合成や利用に遺伝的欠陥が関わっています。

白質脳症の標準的な診断法では、罹患した小児のおよそ50%で疾患が見落とされ、治療を複雑にし、家族への精神的負担を大きくしていると、Dr. Taftは述べます。ヒトゲノムには約30億の塩基対が含まれます。ゲノムのタンパク質コーディング領域であるエクソームにはこの遺伝情報の2%しか存在しませんが、疾患との関連が既知のバリアントのほとんどが含まれます。

過去20年の間、白質ジストロフィーの提示パターンの確認にはMRI(磁気共鳴画像診断法)が選ばれてきましたが、未だに半数近くの患者には具体的な診断がなされていません。WESを行った結果、これまで未解決のその他遺伝性疾患の診断が可能となったことから、研究チームは、白質ジストロフィーであると考えられる遺伝的に未解決の問題にこの技術を用いて答えることを提案しました。

研究チームは、実際は遺伝性のものであると考えられる未解決の白質脳症患者を抱える191家族を特定しました。この患者群のうち101の家族で、MRIを使ったパターン認識の後、標準的な生化学的検査及び遺伝子検査を行い、これまで未診断の90例で、家族構成が3人以上の71家族群を対象とし、研究チームによるWES解析に必要な高品質のサンプルを得ました。シーケンス実施時の患者の年齢幅は3歳~26歳でしたが、一部の患者では、出生時に症候が始まっていました。この研究はイルミナテクノロジーを利用して行われました。

研究では、臨床医が通常行っている診断ツールでの評価に加えWES解析を行うと、「未診断の遺伝性白質脳症患者の割合が50%から30%以下に減少する場合があることが明らかとなりました。 長期にわたり治療法を模索する未診断の患者とその家族に掛かる臨床的および心理社会的なコストを考慮すると、これは非常に価値ある所見です」。診断結果により一部の患者の臨床ケアには、特定の突然変異がみられた家族と共に専門医でがんのモニタリングを受ける精密検査が加えられました。これらの結果に基づき、研究チームは、神経発達障害の小児を対象とした多施設前向き研究で、診断率をさらに上げると考えられる全ゲノムシーケンスを行うことを検討しています。

Children’s National Health Systemについて

米国ワシントンD.C.を本拠とするChildren’s National Health Systemは、1870年の創立以来、国内の小児を対象としたサービスを提供しています。Children’s Nationalは、Leapfrog Groupにより品質と安全性が最高水準と認められたTop Hospitalに挙げられ、Magnet®認定を受け、また、U.S. News & World Report 2015-16では上位10位に入る小児科病院として選ばれています。 Children’s Research InstituteおよびSheikh Zayed Institute for Pediatric Surgical Innovationを抱えるChildren’s Nationalは、NIHが出資する国内トップの小児科施設に数えられます。7つの地域に設置された外来センター、外来手術センター、2つの救急治療室、救急病院、エリア全域の小児科との連携など、Children’s Nationalは地域に根差したその小児医療ネットワークにより、あらゆる小児を支援する小児医療における専門性および革新性が評価されています。詳細につきましては、ChildrensNational.orgをご覧ください。または、FacebookおよびTwitterでフォローしてください。

クイーンズランド大学(UQ)のInstitute for Molecular Bioscienceについて

クイーンズランド大学にあるInstitute for Molecular Bioscience(IMB)は、アジア太平洋地域有数のライフサイエンス研究機関です。2000年の設立以来、IMBは研究を通したクオリティ・オブ・ライフの改善に尽力しています。 IMBの研究者は、世界中の研究者、産業、および臨床従事者と連携して、希少疾患、疼痛、炎症性疾患や薬剤で死滅しない強力な細菌などに関する分野で知識の進展に努めています。当機関では、新たに得られた知見を、より効果的に疾患を予防し、検出し、治療するための薬剤、診断法および技術へと変えることに注力し、医療、産業、および環境にバイオ技術を利用する機会を追求しています。

イルミナについて

イルミナは、ゲノムのパワーを解き明かすことにより、人々の健康を改善することを目指しています。革新的な取り組みに注力することにより、研究、臨床、および応用市場でお客様に製品を提供しながら、DNAシーケンスおよびアレイベースの技術におけるグローバルリーダーとしての地位を確立してきました。私たちの製品は、ライフサイエンス、腫瘍学(がんゲノム)、リプロダクティブヘルス、農業およびその他新たなセグメントでの応用に利用されています。イルミナ製品についての詳細はこちらから:jp.illumina.com、またはwww.facebook.com/illuminakk/でフォローしてください。

イルミナの将来予測に関する記述

本プレスリリースには、リスクおよび不確実性を含む将来予測に関する記述が含まれている可能性があります。将来予測に関する記述と実際の結果が異なる場合の重要な要素としては、当社が米国証券取引委員会(SEC)に提出する最新のフォーム10-Kおよび10-Q等の届け出またはカンファレンス・コール(日時は事前に連絡されます)にて開示される情報にて説明されるその他の要因が挙げられます。イルミナは本リリースの日付後に、これらの将来の予測に関する記述について更新する予定はありません。

 

出典:イルミナ・インク

お問い合わせ先

イルミナ株式会社(Illumina K.K.)
〒108-0014 東京都港区芝5-36-7 三田ベルジュビル22階
TEL:03-4578-2800
FAX:03-4578-2810
URL:http://jp.illumina.com
担当:マーケティング部
問い合わせメール:contactJPN@illumina.com

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