がんにおけるHRDの検出

相同組換え修復欠損とは

相同組換え修復欠損(HRD)は、相同組換え修復(HRR)パスウェイを使用して細胞が二本鎖DNAの切断を修復する能力を失ったときのことを指します1。HRRパスウェイが損なわれると、ゲノム変異やゲノムの不安定性が生じ、がん性腫瘍増殖の一因となります。結果として生じるゲノム瘢痕は、測定によってHRDの状態を評価することができます。

次世代シーケンサー(NGS)による相同組換え修復欠損検査は、原因遺伝子とゲノム瘢痕の両方を1回のアッセイで評価できる有益なテクノロジーとして登場しています。

相同組換え修復のビデオのサムネイル

相同組換え修復パスウェイの欠陥

卵巣がんのアイコン
卵巣がん2

高異型度漿液性卵巣がん(HGS-OvCa)

  • 17%がBRCA1/2に生殖系列変異を保有していた
  • 3%がBRCA1/2に体細胞変異を保有していた
乳がんのアイコン
乳がん3

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)

  • 20%がBRCA1/2に体細胞または生殖系列変異を保有していた
前立腺がんのアイコン
前立腺がん4

転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)

  • 約19%がBRCA1/2BRCAness遺伝子(ATMCDK12)に変異を保有していた
膵臓がんのアイコン
膵臓がん5

膵管腺がん(PDAC)

  • 17%がBRCA2に生殖系列変異を保有していた
  • 24%がBRCA1/2、PALB2に生殖系列変異または体細胞変異を保有していた
  • 8%がATMに変異を保有していた
白衣と白い手袋を身に着けた3人がテーブル上のある物を見ている

HRD検出におけるCGPの価値

包括的ゲノムプロファイリング(CGP)とは、治療選択の際の手引きとなるよう、ガイドラインと臨床試験で確立されたとおり、関連するがんバイオマーカーを含む数百の遺伝子を1回のNGSアッセイで評価するアプローチです。HRDはCGP検査に含めるか、スタンドアロン検査として利用できるゲノムシグネチャーです。

また、CGPには腫瘍変異負荷(TMB)やマイクロサテライト不安定性(MSI)の卵巣がん、乳がん、前立腺がん、膵臓がんにおける希少変異やその他の関連ゲノムシグネチャーを同定する能力もあります。

がんにおけるHRDの理解がBRCA1BRCA2などの原因遺伝子を超えて拡大するにつれ、HRRパスウェイに影響を与える可能性のある他の遺伝子を包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査に含めることも可能です。

CGPに関する詳細はこちら

ソリューションセンターのバッジが付いた青色のラボコートを着て微笑む男性

HRD陽性腫瘍に対する治療法の可能性

腫瘍が相同組換え修復欠損を示す場合、患者はPARP阻害剤による治療に適格である可能性があります。PARP阻害剤の適応症は、さまざまな臨床試験から得られる有望なデータにより、ここ数年で拡大しています6,7

包括的なゲノムプロファイリングは、HRD陽性患者に対して現在承認されている治療法としての他、新規治療法の開発を加速させるためにアクショナブルまたは臨床試験への登録に重要なその他の遺伝子シグネチャーや変異を特定するのに役立ちます。

卵巣がんにおける相同組換え修復欠損(HRD)検査

Isabelle Ray-Coquard, MD, PhDが卵巣がん患者において、CGPがHRDとBRCAステータスを同時に提供する方法について説明しています。彼女は、これらのバイオマーカーのCGP検査から恩恵を受けた患者の症例を紹介し、CGPが他のアクショナブル変異をどのように検出するのかについて論じています。

動画を視聴

ポッドキャストを聴く

Isabelle Ray-Coquard md, phd
HRDレポートとGCPレポートを組み合わせたパワフルな洞察

HRDとCGPを活用して洞察を最大化する

HRDを含むCGPを活用した包括的検査により、より多くの洞察を得ることができます。相同組換え修復欠損の解析とCGP検査を組み合わせる利点の詳細について学びましょう。

無料ガイドをダウンロード

関連コンテンツ

リキッドバイオプシー中の短鎖RNAと長鎖RNAから得られるがんの情報

このウェビナーでは、リキッドバイオプシーサンプルから長鎖RNAまたは短鎖RNAをシーケンスする方法と、がん研究への影響について説明しています。

包括的ゲノムプロファイリングの変革的影響

イルミナは、ASCOにおいてがん患者のプレシジョンメディシンの開始によるCGPの影響について発表しています。

患者ケアを強化するための院内CGPの影響を評価する共同研究

イルミナはAllegheny Health Networkと協力して、組織サンプルと血液サンプルの両方を用いた院内検査の有効性を評価し、血液ベースの検査が最も有益である事例の識別を行います。

参考文献
  1. Lord.C., Ashworth, A BRCAness revisited Na Rey Cancer 16, 110-120(2016).
  2. The Cancer Genome Atlas Network. Comprehensive molecular portraits of human breast tumors. Nature 490.61-70(2012).
  3. The Cancer Genome Atlas Research Network Integrated genomic analyses of ovarian carcinoma. Nature 474, 609-615(2011).
  4. Robinson, D.et al. Integrative clinical genomics of advanced ceostatecancerCel161.1215-1228(2015).
  5. Waddel, N.et al. Whole genomes redefine mutational landscape of pancreatic cancer. Nature 518, 495-501(2015).
  6. Hussain M, Mateo J, Fizazi K, et al. Survival with Olaparib in Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer. N Engl J Med. 2020;383(24):2345-2357. doi:10.1056/NEJMoa2022485
  7. Ray-Coquard I, Pautier P, Pignata S, et al. Olaparib plus Bevacizumab as First-Line Maintenance in Ovarian Cancer. N Engl J Med. 2019;381(25):2416-2428. doi:10.1056/NEJMoa1911361