がんバイオマーカーの検出

白衣と青い手袋を着けてタブレットを見ている2人の女性

アクショナブルがんバイオマーカーの同定

関連する標的治療に伴うがんバイオマーカーの数は増加し続けています。現在、1回の生検、1回の検査、そして1回のレポートでがん患者の治療転帰の向上につなげるNGSをベースとした包括的ゲノムプロファイリングが可能となり、プレシジョンメディシンの進歩と患者の健康・ウェルネスの改善が実現されています1-2

がんバイオマーカー検査を評価する際、治療法の選択に役立ついくつかの重要な検討事項があります。

米国のガイドラインと関連薬剤情報に記載されているバイオマーカー1,3
腫瘍横断型固形がんの概要

1回の生検からバイオマーカーデータを最大化

FISH、PCR、IHCなどの手法を用いた従来の検査は、関連するすべてのがんバイオマーカーを評価するには不十分であり、貴重な組織検体の確保も難しい。順次に個別なバイオマーカー検査を行うのは一般的ですが、いくつかの欠点があります。まず、これらの検査では、大量の生検サンプルを必要で、必ずしも入手できるわけではありません。第二に、これらの単一遺伝子検査の内容は限られており、陽性バイオマーカーを同定する機会を逃す可能性があります。

次世代シーケンサー(NGS)ベースのバイオマーカー検査では、数百もの臨床的にアクショナブルながんバイオマーカーを同時に解析できます。これらのデータにより、適切な分子治療レジメンで患者とマッチングする機会が広がります。一つのNGSベースのバイオマーカー検査は、複数の単一遺伝子検査や小さなホットスポットパネルを置き換でることが可能です4-7

組織生検が利用できない場合、リキッドバイオプシーを用いた包括的ゲノムプロファイリング(CGP)により、腫瘍のゲノム構造に関する有用な情報が得られる可能性があります。これにより、再生検の必要性が減り、がん治療の過程で貴重な時間を節約できます8

主要ながんバイオマーカーの例

免疫療法バイオマーカー

免疫パスウェイに特異的に関与する遺伝子に加えて、腫瘍変異負荷(TMB)やマイクロサテライト不安定性(MSI)など、多数のゲノム遺伝子座の評価に依存する関連バイオマーカーが出現しています。

遺伝子融合

発見された融合遺伝子数の増加に伴い、臨床的にアクショナブルながんバイオマーカーの数も増加しています。臨床的にアクショナブルな融合遺伝子の例には、NTRKおよびRET融合遺伝子があります。

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相同組換え修復欠損(HRD)

HRD(相同組換え修復欠損)は、HRR(相同組換え修復)パスウェイの機能喪失を説明するために使用される表現型の1つです。これが起こると、細胞は二本鎖DNAの切断を修復できなくなり、腫瘍形成につながります。

HRDは、BRCA変異などの「原因」、またはゲノム瘢痕という形での「結果」によって測定することができます。NGSテクノロジーは、原因遺伝子とゲノム瘢痕化の両方を評価できます。

HRDの詳細はこちら

SNV、CNV、および Indel

1塩基変異(SNV)、挿入と欠失(indel)、コピー数バリアント(CNV)など、がん関連遺伝子に関わる変異には複数のタイプがあります。

従来、これら特定のバイオマーカーは単一遺伝子検査で解析されてきましたが、がんの種類ごとにバイオマーカーの数が増加するにつれ、1回のアッセイで多数の遺伝子やバリアントタイプを解析できるNGS法に頼るラボが増えています。

がんバイオマーカー検出のためのCGP

包括的ゲノムプロファイリング(CGP)は、数百のがん関連バイオマーカーを一つのアッセイに集約し、順次的に検査する必要性をなくします。CGPは、ヌクレオチドレベルでバイオマーカーを検出することができ、通常はすべての主要ゲノムバリアントクラス(SNV、indel、CNV、融合遺伝子、およびスプライスバリアント)、ならびに大きなゲノムシグネチャー(TMBおよびMSI)で構成され、臨床的にアクショナブルな変異を見つける能力を最大化します。

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CGPによる患者転帰の改善

分子レベルで適合する治療法の同定を最大化

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CGP検査に含まれるがんバイオマーカー

CGPは、ガイドラインに従って、1回のアッセイで数百もの関連がんバイオマーカーの臓器横断的検査を提供し、サンプル、時間、コストを大幅に節約できる可能性があります。

がん種横断型バイオマーカー      NTRK1        NTRK2        NTRK3        MSI        TMB        RET        BRAF
黒色腫 結腸 卵巣 乳房 膀胱 肉腫
AKT1 BRAF AKT1 BRAF AKT1 BRAF MSH5 ALK
ALK CTNNB1 BRAF BRCA1 AR KIT PMS2 APC
BRAF GNA11 HRAS BRCA2 BRCA1 KRAS TSC1 BRAF
DDR2 GNAQ KRAS KRAS BRCA2 MET   CDK4
EGFR KIT MET PDGFRA ERBB2 MLH1   CTNNB1
ERBB2 MAP2K1 MLH1 FOXL2 FGFR1 PDGFRA   ETV6
FGFR1 NF1 MSH2 TP53 FGFR2 TP53   EWSR1
FGFR3 NRAS MSH6   PIK3CA     FOXO1
KRAS PDGFRA NRAS   PTEN     GLI1
MAP2K1 PIK3CA PIK3CA         KJT
MET PTEN PMS2         MDM2
NRAS TP53 PTEN         MYOD1
PIK3CA   SMAD4         NAB2
PTEN   TP53         NF1
RET             PAX3
TP53             PAX7
              PDGFRA
              PDGFRB
              SDHB
              SDHC
              SMARCB1
              TFE3
              WT1

ここに示す遺伝子は網羅的なリストではありません。

注目のウェビナー

Weill Cornell病理ラボがCGPを導入

自動化対応も可能なイルミナキットの導入により、研究室独自の方法を開発する必要性がなくなり、ハンズオンタイムの短縮やエラーの最小化に役立ちます。

甲状腺がんとNSCLCの新規バイオマーカー

UCSDのDr. Sandip Patelは、甲状腺がんと非小細胞肺がん(NSCLC)のバイオマーカーに基づく治療法の概要を説明し、これらの適応症の主な新規バイオマーカーとその裏付けとなるエビデンスについて論じています。

CGPを活用した広範な腫瘍バイオマーカーの検出

Phil Febbo, MDが、CGPの利点とCGPがどのように腫瘍学における新規標準治療になってきたかについて論じています。

サイエンティストががんバイオマーカーの発見について論じています

がん免疫療法に対する反応性と抵抗性バイオマーカーの同定

Dr. Eliezer Van Allenは、NGSが免疫療法に対する反応性と抵抗性バイオマーカーをどのように同定し、がんが免疫チェックポイント阻害に対する抵抗性をどのように形成するかを解明できるかについて重点的に説明しています。

がんバイオマーカーの正確な同定

サイエンティストが、バイオマーカー発見のための包括的NGSベースのパネルの利点について議論しています。

NGSはバイオマーカー探索に有用であることが証明されました

Phil Febbo, MDが、CGPの利点とCGPがどのように腫瘍学における新規標準治療になってきたかについて論じています。

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参考文献
  1. US Food & Drug Administration. Hematology/Oncology (Cancer) Approvals & Safety Notifications. US FDA website. 更新日:2021年2月9日。アクセス日:2020年12月1日。
  2. Singal G, Miller PG, Agarwala V, et al. Association of Patient Characteristics and Tumor Genomics With Clinical Outcomes Among Patients With Non-Small Cell Lung Cancer Using a Clinicogenomic Database. JAMA. 2019 Apr 9;321(14):1391-1399. doi: 10.1001/jama.2019.3241.
  3. PierianDx. Next Generation Knowledge. PierianDx - Genomic Knowledgebase for Clinical Next Generation Knowledge. アクセス日:2020年3月1日。
  4. Malone ER, Oliva M, Sabatini PJB, Stockley TL, Siu LL. Molecular profiling for precision cancer therapies. Genome Med. 2020 Jan 14;12(1):8. doi: 10.1186/s13073-019-0703-1.
  5. Reitsma M, Fox J, Borre PV, et al. Effect of a Collaboration Between a Health Plan, Oncology Practice, and Comprehensive Genomic Profiling Company from the Payer Perspective. J Manag Care Spec Pharm. 2019 May;25(5):601-611. doi: 10.18553/jmcp.2019.18309.
  6. Kopetz S, Mills Shaw KR, Lee JJ, et al. Use of a Targeted Exome Next-Generation Sequencing Panel Offers Therapeutic Opportunity and Clinical Benefit in a Subset of Patients With Advanced Cancers. JCO Precis Oncol. 2019 Mar 8;3:PO.18.00213. doi: 10.1200/PO.18.00213.
  7. Drilon A, Wang L, Arcila ME, et al. Broad, hybrid capture-based next-generation sequencing identifies actionable genomic alterations in lung adenocarcinomas otherwise negative for such alterations by other genomic testing approaches. Clin Cancer Res. 2015 Aug 15;21(16):3631-9. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-14-2683.
  8. Rolfo C, Mack P, Scagliotti G, et al. Liquid biopsy for advanced NSCLC: a consensus statement from the international association for the study of lung cancer. J Thorac Oncol. 2021 Oct;16, (10):1647-62. doi: 10.1016.