Customer Interview

臨床的に重要ながんバイオマーカーの正確な特定が切り開く個別化医療

TruSight Tumor 170 Panel enables translational researchers to seek answers to multiple questions in one assay.

臨床的に重要ながんバイオマーカーの正確な特定が切り開く個別化医療

臨床的に重要ながんバイオマーカーの正確な特定が切り開く個別化医療

はじめに

Ravindra Kolhe医学博士が次世代シーケンサー(NGS)を最初に学んだのは大学院のときでした。「あらゆるものをシーケンスできるこのテクノロジーのことを聞いたのですが、もうすぐサザンブロット法を実施する必要がなくなると思いました。」Kolhe博士はこのように話します。2008年の病理レジデント中、博士は実際に使用されているNGSを確認する機会を得たいと考えていました。しかし、このテクノロジーに触れる機会に恵まれるまでにはもう4年ほどかかりました。

Kolhe博士は、ジョージア医科大学(MCG)オーガスタ校の病理学部門の准教授兼レジデントプログラム副部長に加え、オーガスタ校医療センターの細胞遺伝学研究所の診療部長兼Georgia Esoteric and Molecular Laboratoryの部長でもあります。2012年、博士のチームは臨床的に重要な疾患バイオマーカーを特定するため、NGSの使用に関する評価を始めました。「遺伝性疾患に関連したバイオマーカーから始め、徐々に腫瘍学へと移りました。がんの分野で最初に有用であったのは急性骨髄性白血病でした。徐々に固形がんでも新しいバイオマーカーが特定されるようになりました。」とKolhe博士は言います。

今日、博士らのチームはTruSight Tumor 170などの新しいバイオマーカーパネルを用いた臨床試験の最前線にいます。iCommunityは今回、バイオマーカーラージパネルの利点、NGSの一般化、およびこのテクノロジーが将来の研究・医療にどのように役立っていくのかについて、Kolhe博士にお話を伺いました。

 

 

 

 

 

変更テキストはここから
Ravindra Kolhe医学博士は、ジョージア医科大学オーガスタ校の病理学部門の准教授兼レジデントプログラム副部長に加え、オーガスタ校医療センターの細胞遺伝学研究所の診療部長兼Georgia Esoteric and Molecular Laboratoryの部長でもあります。

 

 

 

 

質問:病理学にどのように興味を持ったのですか?

Ravindra Kolhe(RK):病理学は、私が研究に情熱を傾け、また基礎科学をトランスレーショナル研究や臨床研究へとつなげることができる分野でした。また、他の臨床専門分野である、心臓学、腫瘍学、小児学と関わることができる大きなプラットフォームでもあります。

質問:博士はMCGとオーガスタ校医療センターで多くの職務を兼務されています。一番楽しまれているのはどの役割でしょうか?

RK:新しいテクノロジーやバイオマーカーを利用できるので、分子病理学が一番楽しいです。研究で利用されるプラットフォームとトランスレーショナル研究や臨床ラボで利用されるプラットフォームとの間には大きなギャップがあります。今日、単純なPubMed検索を行えば、乳がんやその他のがんに関連すると考えられる数百ものバイオマーカーが見つかることでしょう。しかし、こうしたマーカーを用いた研究では、使用した検査方法やテクノロジーに応じて得られる結果もさまざまです。過去10~15年、乳がんの分野で臨床的に検証されたマーカーは、ER/PR1およびHER22だけでした。NGSなどの最先端テクノロジーは現在、トランスレーショナル研究者に、どの新しいマーカーが臨床診断に有用であるかを特定できる信頼性の高いプラットフォームを提供しています。研究の対象は非常に多いです。

「1回のアッセイで固形がんに関連した多くの種類のバリアントを調べることができる初めての包括的なラージパネルです。」

質問:ラボでNGSを使い始める前、バイオマーカー候補を検討するのに使用したテクノロジーや方法はどのようなものですか?

RK:c-KIT3変異、FLT34、CEBPA5およびNPM16用の単一遺伝子アッセイを実施していました。FISH7法などの染色体分析技術、PCRベースのサンガーシーケンスやPCR-RFLP8法のジェノタイピングなどの分子技術を使用しました。NGSをラボに導入した後、15、24および54遺伝子のパネルによる研究を開始しました。

質問:なぜTruSight Tumor 170パネルを使い始めたのですか?

RK:TruSight Tumor 170は完全なプラットフォームであり、新鮮サンプル、凍結サンプル、およびホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織サンプルを解析する簡単なプロトコールを利用できます。試薬および専用のバイオインフォマティクスが統合されています。

最も素晴らしい点はTruSight Tumor 170のコンテンツと包括性です。多くの種類の固形がんに関連したがん遺伝子を備えています。私たちが使用していたスモールパネルは、DNAまたはSNVベースであり、1つまたは2つの種類の固形がんに関連したマーカーに焦点を当てていました。TruSight Tumor 170を使用すれば、14種類以上の固形がんに関連した170遺伝子を解析できます。融合、スプライスバリアント、挿入/欠失、およびSNVに関するDNA、RNAを解析でき、

また単一遺伝子やスモールパネルと比較して費用効率も良いです。1回のアッセイで固形がんに関連した多くの種類のバリアントを調べることができる初めての包括的なラージパネルです。まるで星空の夜を窓越しに見ることとハッブル宇宙望遠鏡で空を観察することを比べたかのような大きな違いがあります。TruSight Tumor 170では、大規模でありながら細やかな情報が得られます。

「TruSight Tumor 170アプリが強固なバイオインフォマティクスのパイプラインであることが分かりました。」

質問:多数のバリアントを同時に調べる利点はどのようなものですか?

RK:包括性の利点は科学というよりも経済の面にあります。臨床試験では、エネルギー、時間および技術者の費用はラージパネルでもスモールパネルでもほぼ同じです。しかし、スモールパネルの場合、どの種類の腫瘍がサンプル中に認められる可能性があるか推測しなければなりません。TruSight Tumor 170は多数の固形がんマーカーを網羅しているので、このパネルが扱う固形がんの種類を知る必要はありません。このおかげで1回のアッセイで多くの疑問への答えを追求できます。

質問:BaseSpace Sequence Hub上のTruSight Tumor 170アプリを使用したデータ解析の経験はどのようなものでしたか?

RK:TruSight Tumor 170アプリによるデータ解析は優れています。数か月前、学術的な場でシーケンスおよびインフォマティクスを行う他のラボと共にSequoia Groupを設立しました。グループでの多くの研究は現在、TruSight Tumor 170を使用しています。全員がバイオインフォマティクスの専門家とは限らないので、私たちはグループにTruSight Tumor 170アプリおよびパネルの使用について相談する機会を得ています。TruSight Tumor 170アプリが強固なバイオインフォマティクスのパイプラインであることが分かりました。

「TruSight Tumor 170のようなソリューションを使用すれば、臨床試験により、さまざまなドライバーの有無を特定し、個別化された精密な腫瘍学の情報を得られるマーカーを明らかにすることができます。」

質問:トランスレーショナル研究におけるTruSight Tumor 170パネルの考えられる利点はどのようなものですか?

RK:これまでがん治療では、推測を踏まえて「one size fits all(汎用性)」を目指した方法を適用してきました。特定のがんには特定の治療レジメンを行い、それがすべてでした。異なる病期や再発時、何が発がんドライバーであるのか、また、こうしたドライバーが人によってどう異なるのか検討したり、調査したりしたことはありませんでした。私たちは、これらの違いを特定し、がん治療に関する個別の腫瘍遺伝学に主導された方法への活動を支えることに注力しているグループの1つです。TruSight Tumor 170のようなソリューションを使用すれば、臨床試験により、さまざまなドライバーの有無を特定し、個別化された精密な腫瘍学の情報を得られるマーカーを明らかにすることができます。

質問:トレーニングの観点から、チームがNextSeq 550システムを使用したアッセイを使いこなすようになるまでどの程度の期間かかりましたか?

RK:事前準備をしてから、トレーニング、プロトコールの詳しい調査、そしてランシートの作成を実施しました。フィールドアプリケーションスペシャリスト(FAS)のトレーニングを受ける際には、すでに質問を用意していました。このことが大きな違いを生みました。私たちはFASが初回のランを実施するのを観察しました。チームは2回目のランを自力で実施し、手順を身に付けました。NextSeq 550システムは使いやすいです。技術者間のデータ一致率は100%を達成しています。

質問:イルミナチームと協力することでどんなメリットがありましたか?

RK:イルミナチームは素晴らしかったです。私たちが実施している研究を理解し、とても頼りになりました。

まさに違いを生み出すチームであり、そこが他社よりもイルミナと協力したいと考えた理由です。優れたサイエンスはもちろんのこと、献身的なチームとの連携を望むはずです。一つの会社とその製品に時間、エネルギー、資金を費やすわけですから、話をよく聞いてくれることが重要なのです。

質問:ラボにとって「NGSの一般化」とはどのような意味でしょうか?

RK:NGSは、リファレンスラボ、大型ラボ、学術センターに限られたものではないということです。将来、NGSはあらゆる研究ラボや臨床ラボで日常的なプラットフォームになると考えています。プロトコールがより洗練され、自動化され、使いやすくなれば、NGSアッセイは普通に使われる検査になるでしょう。シーケンスのコストが下がり、支払う人がその価値を理解すれば、NGSパネルの費用還付が確立され、より多くのラボがサービスの提供を始めるようになるでしょう。

質問:将来、NGSは何をもたらしますか?

RK:NGSがどこまで能力を発揮するか検討するには至っていません。15、26および54遺伝子のパネルから開始しましたが、現在TruSight Tumor 170を使用しており、ラージパネルであるという認識です。今後はさらに大きなパネルになるでしょう。ある時点で、臨床全エクソーム、low-pass臨床全ゲノムさらに臨床全ゲノムのシーケンスに移行すると思います。これからの計画ではありますが、その方向へと向かっています。

このインタビューに登場するイルミナの製品やシステムについての詳細は、以下のリンクからご覧いただけます:

TruSight Tumor 170

BaseSpace Sequence Hub

NextSeq 550システム

脚注
  1. ER/PR;エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体
  2. HER2;ヒト上皮成長因子受容体2
  3. c-kit;チロシンプロテインキナーゼキット
  4. FLT3;Fms関連チロシンキナーゼ3
  5. CEBPA;CCAATエンハンサー結合タンパク質α
  6. NPM1;ヌクレオフォスミン1
  7. FISH;蛍光in situハイブリダイゼーション
  8. PCR-RFLP;PCR-制限酵素断片長多型分析法