少量インプット対応で広がる用途。ワークフローが簡潔化された新しいRNAライブラリー調製キット、お客様の声
イルミナは、2020年6月に3種類の新しいRNAライブラリー調製キットを発売しました。国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産資源研究所 水産資源研究センター 生命情報解析部 分子機能グループの安池元重先生のチームでは、より迅速で少量インプットに対応、低コストのライブラリー調製ワークフローを提供するIllumina Stranded mRNA Prep, Ligationをご利用いただいています。キット選定の要因や、実際の使用感をお伺いしました。
Q. 安池先生のご研究の中で、Illumina Stranded mRNA Prep, Ligationをどのような用途にご利用されていますか?
A. 私は主に、水産重要生物のゲノム情報の整備やさまざまな生理現象を分子レベルで理解するためにトランスクリプトーム解析を行っています。世界でも有数な好漁場に恵まれた日本では、多種多様な水産物が利用されています。したがって、対象とする生物種は幅広く、魚類はもちろんのこと、イカなどの頭足類、クルマエビなどの甲殻類、ノリ、ワカメなどの海藻類や真珠養殖に利用されるアコヤガイなどさまざまです。そのようなありとあらゆる非モデル生物に対応可能な当製品を、遺伝子のカタログ化や遺伝子発現解析(mRNA-Seq)に利用しています。
Q. Illumina Stranded mRNA Prep, Ligationを採用された理由を教えてください。
A. 以前はTruSeq Stranded mRNA Library Prep Kitを使用していました。新製品は従来品(TruSeq)より
- トータルRNAの推奨最小量が100 ngから25ngになり解析できるサンプルの幅が広がること
- 4割近く作業時間が短縮できること
Q. 実際にご利用になられて、ご使用感や良いと評価されている点を教えてください。
A. 実験操作自体は実験補助の方に対応いただいています。その方は小学校低学年のお子様がいるため、勤務時間は1日6時間(8:30-15:30)です。従来品のTruSeqですと、ライブラリー作製に3日間かかりますが、新製品はゆとりを持っても2日間で完了します。したがって、以前より多くのサンプルをこなせるようになりました。実は実験補助の方は分子生物学の実験は未経験ですが、新製品はワークフローが簡潔化されたため、2回目からは一人で実施することができるようになり、しかも安定的な結果が得られています。どなたがやっても同等な結果が得られるということは、データの信頼性を高める上でも大きなメリットだと考えています。
Q. 今後、イルミナのRNAシーケンス製品(ライブラリー調製、シーケンシング、データ解析、保管や共有)に期待することをお聞かせください。
A. 今後、飼育している水産生物だけでなく、海や川で採られた天然サンプルのRNA-Seq解析も幅広い生物種で行う予定です。その中には極微量の組織しか採れないサンプルもあります。さらに微量、例えば1ngのトータルRNAからスタートできるようになると、解析対象の幅も格段に広がります。また、天然サンプルは船上での解剖が困難であることから、保存状態の悪いサンプルも出てきます。しかしながら、それが二度とは採れない貴重なサンプルだったりすることもあります。そこで、分解がある程度進んだRNAでも効率よくライブラリー作製が可能な非モデル生物対応のキットの開発を期待します。
NextSeq™ 500システムの前にて。安池元重先生と実験担当の深谷えりか様。
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