Case Study

がんの診断と治療選択を向上させるための解析システムの使用

研究者や臨床医が利用できる、ゲノムデータの解析、処理、配布のベストプラクティスワークフロー開発と自動化。

がんの診断と治療選択を向上させるための解析システムの使用

がんの診断と治療選択を向上させるための解析システムの使用

要約

概要

UMCCRのゲノミクスプラットフォームグループは、シーケンスワークフローの拡張性と信頼性を高め、がんゲノムの変化をより精確に検出し、腫瘍データをリアルタイムで利用できるようにすることを目指しています。

課題

このグループでは、ゲノミクスデータの解析とレポート作成のためのワークフローを実行して共有するための、企業によるサポート付きの拡張性のあるクラウドベースの環境を必要としていました。

解決策

彼らは使用していたワークフローとシステムをIllumina Connected Analyticsに移行させることにしました。

利点

Illumina Connected Analyticsを用いることで、ゲノミクスプラットフォームグループは、解析パイプラインの最適化と標準化、データアウトプットからキュレートされたレポートまでのタイムラインの合理化、および国内外の共同研究者とのワークフローやプロセスの共有という作業すべてを法令に準拠したセキュアなデータ環境内で行うことにより、シーケンスワークフローをデジタル化することができました。

はじめに

メルボルン大学がん研究センター(UMCCR)のミッションは、「がん治療における臨床的影響を高めるイノベーションと実施を推進する」ことです。Sean Grimmond氏が率いるUMCCRは、がん発生や標的治療を理解する際にゲノム情報を使用することにより、がん患者の転帰向上を加速させるための取り組みを実施しています。UMCCRは、施設を超えた個別化がん治療プログラムを実現するために、ビクトリア州立総合がんセンター(VCCC)の提携パートナーと協力しています。

この取り組みの中核は、次世代シーケンス(NGS)データの処理、解析、および解釈から得られた結果を研究者や臨床医が広く利用できるようにすることです。これはUMCCRのゲノミクスプラットフォームグループの目標であり、「シーケンスワークフローの拡張性と信頼性を高め、がんゲノムの変化のより精確な検出を実現し、腫瘍データをリアルタイムで利用できるようにする」ことです。この目標の達成を促すため、ゲノミクスプラットフォームグループのリーダーを務めるUMCCR准教授でバイオインフォマティクス、臨床病理学の主任であるOliver Hofmann博士は、イルミナと協力してIllumina Connected Analyticsのアーリーアクセスを使用されました。

 

 

 

 

 

 

UMCCRのゲノミクスプラットフォームグループは、がんの検出と治療向上のためにゲノムシーケンスデータの使いやすさを改善することに取り組んでいます。

拡張性のあるバイオインフォマティクスを求めて

Hofmann博士とチームがイルミナと協力を開始した頃は、ハイスループットNGSデータ解析のパイプラインを使用していました。このソリューションは高い再現性でショートリードのシーケンスデータを処理することができましたが、チームは従来の高性能コンピューティング(HPC)からクラウドベースのプラットフォームに移行して拡張性を高めることを望んでおり、別のソリューションを探し始めていました。

Hofmann博士は、新しく導入するパイプラインの具体的な要件のリストを作成していました。オープンソースソリューションであること、クラウドネイティブであること、ラボからのアクセスが簡単で、最終的には提供されたワークフローを使ってデータの解析と解釈を自身で実施できること、ということが求められました。成功には長期的なサポートが欠かせないため、教育機関の開発したパイプラインではなく企業の製品の方が有望であると考えられました。ラボがゲノムからレポートを7日未満で作成できるようにするためには、迅速なバイオインフォマティクスが必要でした。さらに、国際協力組織GA4GH(Global Alliance for Genomics and Health)の功労者であるHofmann博士は、GA4GHの標準に対応できるソリューションを求めていました。

Illumina Connected Analyticsとの出会い

ゲノミクスプラットフォームグループは、必要とされるサポート、スピード、信頼性が得られるソリューションを見つけるために複数のソリューションの検証を始めました。Hofmann博士は、イルミナのチームと話をした際に、Illumina Connected Analyticsと呼ばれる有望なプロジェクトが開発中であることを知り、これが自身の要件を満たすものであると考えました。

Illumina Connected Analyticsは、1つの環境でゲノムデータの保存、管理、および解析を行うためのクラウドベースのシステムです。このシステムは、世界中で使用できる包括的データ管理パイプラインをセキュアな環境で構成するためにアマゾンウェブサービス(AWS)上で構築されています。Illumina Connected Analyticsを使用すると、ユーザーはすべての公開されているワークフローにアクセスでき、自分のワークフローを他の人と簡単に共有できるため、ラボ間での共同研究が簡単にできます。イルミナは堅牢性と拡張性を考慮してこのプラットフォームを構築したため、このプラットフォームにはチーム独自のニーズを満たすための改変を加えることのできる十分な柔軟性がありました。つまり、まさにゲノミクスプラットフォームグループが求めていたものでした。 

「すべてを1つの環境に移行することで、新しいワークフローをそれぞれ吟味するプロセスが最小限に抑えられ、認定プロセスが簡単になります。これが臨床シーケンス環境の設定に役立つのです。」とHofmann博士は述べます。「プロセスが合理化され、過去に実施した作業を利用できるようになるため、同じ検証作業を何度も繰り返し行う必要がないのです。」 

また、Illumina Connected Analyticsでは、シーケンスデータの精確で超高速の二次解析が可能なDRAGEN™ Bio-IT Platform のパワーを利用できます。DRAGENパイプラインを利用すると、解析は6~7時間で完了します。このスピードは非常に重要です。キュレートされたレポートを7日以内に完成させるためには、解析を48時間以内に完了させる必要があるからです。NovaSeq™ 6000システムで生成されたデータはIllumina Connected Analyticsに直接アップロードされ、シーケンスランの完了後すぐにそこで解析されます。中間データのステージングサイトがないため、プロセス全体が短縮されます。

HPCとクラウドのハイブリッドソリューションではなく、すべてが1カ所にあるIllumina Connected Analyticsが提供するシンプルなワークフロー管理には、計り知れない将来性があると感じています。ターンアラウンドタイムの向上はすばらしいものであり、データポータルとモニタリングをIllumina Connected Analyticsに移行するのが待ちきれません。

協力から生まれる結果

過去数カ月間、UMCCRのHofmann博士とゲノミクスプラットフォームグループはイルミナのチームと協力してIllumina Connected Analyticsのワークフローを最適化してきました。イルミナは、GA4GH標準への対応に尽力しており、チームが最小限の労力で既存のワークフローをプラットフォームに移行できるようにしています。このプラットフォームにより、チームは展開したワークフローの管理を維持しながら、企業によるサポートのある安定した本番環境を得ることができました。Hofmann博士はこの共同研究の取り組みを以下のように述べています「すばらしい。これまで多くの産学共同に参加してきましたが、今回の取り組みはコミュニケーション、ハンズオンサポート、そして調和性という点で最高のものであったことに間違いありません。イルミナは、プロセスのあらゆる段階ですぐに対応し、計画表、設計決定に関する情報、そして実際の導入サポートを提供してくれました。」

今後、ゲノミクスプラットフォームグループはGA4GHとの協力を続け、Illumina Connected Analyticsが各団体の標準規格に準拠していることを保証し、他の研究者がUMCCRデータの解析を実行できるようにしていきます。最終的に、このチームでは、UMCCRで開発されたがん解析ワークフローをターンキーソリューションとして科学界で使用できるようにすることを望んでいます。彼らの目標は、何が特定のがんを発症させるのかを理解し、それが治療にとってどのような意味を持つのかを明らかにするのに必要な情報にアクセスできるようにすることです。

詳細はこちら

Illumina Connected Analytics:jp.illumina.com/connected-analytics