プレシジョンヘルス

重要な介入:感染患者へのNGSの使用の増加

MicroGenDXが、希少病原体をより速く、より適切に検出する方法

重要な介入:感染患者へのNGSの使用の増加
Craig Tipton, PhD, Director of Biostatistics and Nick Sanford, PhD, Vice President of Medical Affairs at MicroGenDX
2025年9月10日

ゲノミクスはがん治療や希少疾患診断を変革してきましたが、感染症検査は古い方法で遅れを取っています。多くの場合、医師は依然として限られた、または時代遅れのテクノロジーしか利用できず、不十分で不完全な情報に基づいて意思決定を行うことができません。

例えば、医師が、感染の兆候はあるが培養で陰性の術後患者を抱えることは珍しいことではありません。「まさにこの点で、医師は最も頻繁に行き詰まり、何の洞察も得られません。患者は感染していると分かっていますが、培養の結果はそうではないのです」と、MicroGenDXのメディカルアフェアーズ副社長Nick Sanford, PhDは言います。「ラボはMDとしての20年の経験を重視するあまり、他のすべてのことが感染を示しているのに、主な診断ツールと一致しなければ偽陰性に違いないと考えるのです。」 そこから、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査に頼る臨床医もいます。PCR検査では、ラボで遺伝物質を増幅して検出できるようにします。しかし、この方法で検出できるのは、使用する特定のパネルにプライマーが含まれる生物に限られるため、病原体の検出能力が制限されます。

「次の論理的ステップは、」とSanfordは言います「次世代シーケンサーです。」 MicroGenDXによって実装されるように、各次世代シーケンサー(NGS)検査には、細菌や真菌の普遍的遺伝子を増幅するための標準化されたプロセスが含まれます。

Sanfordは、米国全土および海外で100万を超えるNGS検査を処理してきた米国企業MicroGenDXのメディカルアフェアーズを統括しています。米国では、2024年1月以来100を超える病院システムと契約を締結しており、今年4月には海外からのサンプル検査を行う姉妹会社MicroGenDX EUを立ち上げました。MicroGenDXは感染症の研究と臨床試験を専門としており、多くの場合、整形外科医、呼吸器科医、神経内科医(中枢神経系感染症)、感染症専門医などと連携しています。

同社は最近、テキサス州の研究所でNGSテクノロジーをアップグレードしました。より高速なシーケンスと解析機能により、サンプルから答えを得るまでのターンアラウンドタイムを3~5日から 24時間に短縮しました。彼らは、12時間のランタイムから優れた臨床グレードのデータ品質を取得できると報告しており、これは患者のサンプルを受け取った翌日には医師に結果を届けるのに役立ちます。「今やこれは、病院における臨床的な意思決定に遅れを取らない診断法であり、」とSanfordは言います。「病院にとっては、常にターンアラウンドタイムが懸念されます。」

実際に迅速なNGS検査の恩恵を受けるのは誰でしょう? 正確な診断と治療を受けることで、敗血症や急性感染症の患者がICUに滞在する時間が短縮され、合併症を回避し、病気の悪化を防ぐことができるのです。これらの結果は、医療従事者の標的治療開発をサポートし、患者をリスクの高い衰弱状態から回復させるのに役立つます。

再発性UTIに罹患している高齢患者またはカテーテル挿入患者には、標的治療を施すことで、症状をより迅速に解消し、不適切な抗生物質の使用を減らすことができます。慢性疾患患者は、通院や再入院を減らすことができるかもしれません。小児患者や免疫不全患者は、結果を待つ間、何日も入院する必要がなくなるでしょう。NGS検査を迅速化すれば、家族の医療費削減、病院や保険者の全体的なコスト削減にもつながります。

呼吸器科や耳鼻科でもNGSがますます利用されるようになっています。MicroGenDXでは、数週間にわたって抗生物質を繰り返し使用している多くの患者から気管支肺胞サンプルと鼻腔スワブを受け入れています。原因となる病原体と薬剤耐性マーカーを同定することで、感染症が慢性化する前に医師が介入できるようになります。

過去には、ターンアラウンドタイムが3~5日間だったNGSを医師は最後の手段と見なしていたとSanfordは考えています。しかし今では、MicroGenDXのラボ処理が高速化したことで、NGS検査は医療従事者にとって魅力的になりました。「有用なデータを得るまでの時間を短縮することは、少し煩わしいかもしれませんが重大な合併症を検出する可能性があります。」と彼は言います。

研究と試験
MicroGenDXでは、さまざまな集中治療環境に関連するアプリケーションの研究も行っています。同社は、人工関節周囲感染(PJI)のリスクまたは慢性的病歴のある患者から採取した滑液2000検体を評価する研究論文を提出しました。「PJIについては問題が山積みで、」とMicroGenDXの生物統計ディレクターCraig Tipton PhDは言います。

Tiptonは、整形外科医と感染症医の両方から定期的に懸念を聞いています。「これらの非常に慢性的な感染症管理に多くの時間が費やされます。」と彼は言います。MicroGenDXは、培養や定量PCRのみの検査などの微生物学的検査では、他の従来の診断法よりもNGSの感度が優れていることを実証しました。この研究には直接の比較対象はありませんでしたが、大規模なメタ解析では、培養検査の感度63%、一般的に使用されるqPCRパネルの感度41%~56%に対し、NGSの感度は76%でした。

「感度を50%から76%に向上できれば、患者のさらに4分の1について、感染の診断、その感染の治療のガイド、および手術の必要性を判断するための有用な情報が得られることになり、」とTiptonは言います。「これだけの追加情報を得るのは非常に大きなことです。」

Sanfordは、デエスカレーションももう1つのメリットだと付け加えます。例えば、ICUの患者に真菌感染の疑いがあれば、高価な経験的抗真菌療法を開始することができます。しかし、NGSから提供された回答があれば、医師ははるかに迅速にデエスカレーションし、抗菌薬の用量、副作用の可能性、および関連する費用を減らすことができます。

1つの方法、特に培養のみを使用する場合、そこに存在しうるあらゆる領域を見逃すことになります。

今月より、MicroGenDXは、米国全土の10~15の外傷病院で、インディアナ大学が主導する治験に参加する予定です。参加者は、外傷による骨折の治癒を試みる手術を1回以上受け、骨折関連感染(FRI)が疑われる患者です。

「感染症を発症すると、失敗率は極めて高くなります。」とTiptonは言います。「そして失敗率は、問題を是正し感染を除去しようとする複数の手術につながる可能性があります。入院、リソース利用、高い死亡率など、考えられるあらゆる指標には高いコストが伴います。MicroGenDXはMajor Extremity Trauma Research Consortiumと提携して治験を調整しています。介入群では、患者はNGS用サンプルを提供します。研究者らは、再置換術時にNGSサンプリングを組み込む効果を、従来の培養法に頼って治療情報を提供する現在の標準治療と比較します。

この標準プロトコールでは、医師は手術を受けるまでFRI診断を確定できず、培養による確定まで数日待たなければならない場合が多くあります。診断を確定することで、患者は退院し、必要に応じて標的治療を開始することができます。

研究チームは、1年以上にわたって患者を追跡調査し、より早期のさらなる標的治療が、より迅速な治癒、より少ない手術などの改善につながるかどうかをモニタリングする予定です。また、従来の診断では見逃されていた所見も追跡します。感染に対して抗生物質が処方された場合は、薬剤の管理と有害作用も追跡します。

培養(culture)の文化(culture)
TiptonとSanfordはどちらも、従来の培養検査が不完全だとしても有用なツールであることをすぐに指摘しています。「標準治療から外すよう推奨するわけではありませんが、多くの制限があります。」とTiptonは言います。従来の培養法では、培養皿、特に嫌気性菌、真菌、またはマイコバクテリアといった増殖の遅い病原体でうまく増殖しない微生物を見逃してしまうことがよくあります。

マルチプレックスqPCRやNGSなどの分子診断検査の依頼が増えていることに気付いたTiptonは、「1つの方法、特に培養法だけを使用する場合、そこに存在する膨大なスペクトルを見逃してしまう」と言います。MicroGenDXの滑液サンプルの研究では、NGSでPJI陽性と判定された467検体を解析しました。qPCRでは迅速に結果が出る一方で、この研究では、これらのサンプルで報告された優勢微生物の44%が、一般的に使用されている関節感染用の市販のマルチプレックスqPCRパネルに含まれていないことがわかりました。 

優勢微生物とは、少なくとも1例の患者サンプルで最も豊富な微生物であり、感染した関節の治療において優先事項とされることがよくあります。これらの微生物を見逃すと、感染が確認されなければ患者にとって悲惨な結果となる場合もあります。「qPCRパネルを作製して感染の原因と考えられる驚くほど多様な微生物を捉えることは、かつてないほど困難です」とTiptonは言います。「そして、培養を通して何かを検出することはできますが、理論的には、培養で増殖が難しいあらゆるものを見逃してしまうことが分かっていて、患者が抗生物質を服用していると、さらに困難になります。抗生物質を使用している場合、そこには何も見えないでしょう。

NGSを使用する場合、MicroGenDXは、予期せぬ希少生物が、誰も予想しなかった場所で見つかることもあるのです。例えば、滑液中に発見した結核の原因菌や肺生検中に発見したTropheryma whippleiは、ホイップル病の非定型症状の診断に役立ちます。

MicroGenDXチームは、何年も専門医に通院し、役に立たない検査を受け、時には懐疑心に直面しながら、衰弱するほどの痛みを抱えて生きている人々から、力強い話を聞くことがよくあります。彼らは、従来の方法であろうがなかろうが、何の役にも立たなかったとよく言います。しかし、NGS検査で病気の原因が特定され、個別化治療を受けた場合、患者の安心感は計り知れません。

培養検査の結果が陰性だったことに頭を悩ませているベテランの医師はどうでしょうか?

潮流が変わり始めています。専門団体がガイドラインの改訂を始めています。2018年、国際感染症コンセンサス会議は、人工関節周囲感染症の診断ガイドラインを更新して、NGS検査を提唱する新しい公式声明を発表しました。別の事例として、米国感染症学会は最近、NGSの潜在的使用事例に関する新しいガイダンス声明を発表しました。

「PCRは、COVIDの検査や、手術前の患者のカンジダ・アウリススクリーニング検査の際に効果を発揮します」とSanfordは言います。「しかし、微生物が感染症の原因と考えられる 場合は、NGSを使用する非依存的な手法が、最終的には診断の主流になると考えています。」

最近の記事

LQTSで普通の生活を送ることは可能です。Hansensにお問い合わせください。
LQTSで普通の生活を送ることは可能です。Hansensにお問い合わせください。
イルミナが企業市民ベスト100社リストに掲載
イルミナが企業市民ベスト100社リストに掲載
アブダビにおける非侵襲的出生前検査(NIPT)へのアクセス拡大
アブダビにおける非侵襲的出生前検査(NIPT)へのアクセス拡大