日時 | 2021年12月18日(土)12:50 ~ 13:50 |
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会場 | 第2会場(千里ライフサイエンスセンター5F「サイエンスホール」) |
座長 | 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 左合 治彦 先生 |
演者 | 国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 西山 深雪 先生 |
演題 | 本邦における出生前検査の遺伝カウンセリングの今後~出生前検査の教育ツールアプリの活用法~ |
要旨 | 本邦では出生前検査への関心が高まっており、検査前後の遺伝カウンセリング(GC)の重要性が改めて認識されつつある。その一方で、ICT(Information and Communication Technology)の普及や非認定施設でのNIPTの実施により、インターネット上の情報のみに依拠して検査を受検し、その後の意思決定に必要となる情報や相談・支援がないために妊婦が苦悩する事例も報告されている。 こうした状況下で、厚生労働省は本年6月に、出生前検査に関する妊婦への情報提供について通知をしている。本邦では1999年の「母体血清マーカー検査に関する見解」で「医師が妊婦に対して、本検査の情報を積極的に知らせる必要はない」という見解が示されて以来、医療機関や行政機関において検査の情報提供を妊婦に行うことを避ける傾向がみられてきたが、今回通知された「出生前検査に対する見解・支援体制について」では、「妊娠の初期段階において妊婦等への誘導とならない形で、出生前検査に関する情報提供を行っていくことが適当である」と明記されている。したがって、妊婦が正しい情報の提供を受け、適切な支援を得ながら意思決定を行っていくための体制整備がより一層重要となる。 しかし、遺伝関連専門職(臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー®)が在籍する産婦人科施設の数は限られていることから、出生前検査を検討する全ての妊婦に遺伝関連専門職の対面による個別のGCを行うことは難しい。この専門職の不足は日本のみならず世界共通の課題であり、以前から全妊婦に出生前検査の選択肢を提示している国々では、限られた人的資源のもとで効果的に妊婦の意思決定を支援する方法が模索されてきた。例として、グループによるGCや、ビデオや書面、ウェブの活用が挙げられているが、近年ICTが普及する中で、スマートフォンやタブレットで利用可能なアプリに関する報告はない。 今回、出生前検査の教育ツールアプリを作成し、妊婦のアプリの利用がGCに与える影響を検討するために無作為化多施設国際共同研究を行ってきた。本アプリは妊婦がGC前に利用可能であり、昨今のコロナ禍により対面を避ける要望もある中で、対面による個別のGCを補完する対応の1つとしても有用となるだろう。本セミナーでは、研究結果を紹介しながら出生前検査の教育ツールアプリの活用について考える機会を提供したい。 |