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日本人類遺伝学会第64回大会 イベント開催レポート

日本人類遺伝学会第64回大会
イベント開催レポート

2019年11月7日(木)-9日(土)、長崎ブリックホールおよび長崎新聞文化ホールにて、日本人類遺伝学会第64回大会が開催されました。「The Beginning」をテーマに、2000人の参加者を集めて盛会裏に終了しました。イルミナは、企業展示とランチョンセミナーで参加しました。

 

ランチョンセミナー

ランチョンセミナーのご講演資料をこちらからダウンロードしてご覧いただけます。

ランチョンセミナーでは「多因子疾患の遺伝的リスク評価の新しいパラダイム ポリジェニックリスクスコアとは何か?」をテーマに、2名の先生にご講演いただきました。会場は満席で、本大会におけるポリジェニックリスクスコアに対する関心の高さがうかがわれました。企業講演では、ゲノム情報に基づく個別化予防を実装するツールとしての低コストスクリーニングアレイをご紹介し、分かりやすいアニメーションでポリジェニックリスクスコアを解説した動画を上映しました。

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当日の会場の様子
『ポリジェニックリスクスコアが切り拓く予防医療の未来』
岩手医科大学 八谷 剛史 先生

 八谷先生には、脳梗塞を例に、日本人集団におけるポリジェニックリスクスコア(PRS)に基づく個別化予防についてご講演いただきました。

過去のゲノムワイド関連解析(GWAS)で同定された疾患感受性多型では、双生児研究から推定される遺伝率のごく一部しか説明できない、という課題がありました。PRSは、GWASで同定された疾患感受性多型だけではなく、全ゲノムに散在する多数の多型の情報を用いて、対象疾患のリスクを予測します。八谷先生は、日本人バイオバンクの情報を用いて脳梗塞発症リスク予測法を構築、久山町研究などの情報を用いて検証されました。その結果、GWASの結果だけを用いるよりも、精度の高い予測をすることができたとのことです。

その後は、PRSモデル構築のワークフローについてご解説いただきました。PRSの精度は民族差に影響されるため、集団ごとにGWASデータに基づいたPRS構築が必要である、との報告を紹介されました。そして、今後はより多くの日本人ゲノム研究の推進がPRSを用いた個別化予防に重要であると強調されました。

最後に、対象疾患への集団内相対リスクが高い人々に対する予防的措置の適用など、ヘルスケアシステムでのPRSの将来的な臨床応用についてお話いただきました。PRSは、臨床応用において非常に大きな可能性があるとしつつ、欧米人のみならず各民族集団で有効なPRS構築、PRSの結果を返すことによる利益と害に関する研究、倫理的、法的、社会的制度の整備などが必要となることを指摘されました。

八谷先生には、PRSについて世界の一線の研究者に解説いただいたインタビュー動画にもご出演いただいています。

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岩手医科大学
八谷 剛史 先生
『ポリジェニックスコアを用いた遺伝学的検査は予防行動を促すか?』
東京医科歯科大学 村松 正明 先生

村松先生には、PRSを用いた遺伝子検査結果が、被験者の健康観・行動変容に与える影響について、社会医学的観点からご講演いただきました。

村松先生のご研究では、職場検診の場で希望された方の中から、注意深く選定された被験者に、疾患や体質のリスクに関する遺伝子検査を受けてもらいました。その後、医師を介した説明の後に結果を返し、受検前と後でのアンケート調査結果を比較されました。また検査後1年間、計3回にわたって追跡調査が行われました。

その結果、被験者は丁寧な説明によって検査結果を正しく理解し、希望して検査を受けた集団は、概ね結果を肯定的に捉える傾向が認められた、とお話になりました。また30項目にわたるアンケートから、遺伝子検査後のアンケートで「十年後に罹るかもしれない病気に関して、より理解が深まり、自分でコントロールできるという意識が高まった」との結果が得られ、追跡調査の結果として、遺伝子検査の結果は記憶される、ということが分かりました。このことから、医師を介して結果を返す遺伝子検査という形態では、PRSを用いた疾患リスク評価結果は、新しいNarrative-based Medicine(NBM)を促すツールとなり得るという可能性を示唆されました。

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東京医科歯科大学
村松 正明 先生

企業展示ブースでは、超高速NGSデータ解析サーバーのDRAGENを展示し、多くの皆様にお立ちよりいただきました。