第23回日本がん免疫学会総会
イベント開催レポート

第23回日本がん免疫学会(8/21-23)に、イルミナは企業展示とモーニングセミナーで参加しました。22日に行われたモーニングセミナーでは、公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター所長の中村祐輔先生にご登壇いただきました。

 

朝8時からの開始にもかかわらず、開場30分以上前から列ができるほどの大盛況でした。講演時間は40分でしたが、中村先生はがん免疫治療の歴史から最先端の研究成果まで網羅し、Liquid Biopsy for Cancer Screening、再発モニタリング、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカー探索といった実際の取組み成果をご紹介されました。

 

20年以上前から「オーダーメイド医療」を提唱し、がんプレシジョン医療に取り組まれていた中村先生。その先生の新しい治療法開発の一端に、イルミナの次世代シーケンサー(NGS)を活用いただいております。またImmunogenomicsと Pharmacogenomics を融合させた Immunopharmacogenomicsという新しい分野を提唱し、NGSを用いた独自のTCR/BCRの高精度な解析方法を開発されました。TCR 解析によるT細胞のクローナルな増殖の検出は、特定の腫瘍の抗原をアタックしているT細胞が増えている可能性を示唆します。このような解析が、がん組織だけではなく血液からも可能というデータも示されました。血液から解析が可能になることは、スクリーニングや治療後のモニタリング等に利用できる可能性があることを示しています。

一方、先生は tumor-infiltrating lymphocytes (TILs) のTCR/BCR解析データや、腫瘍組織のエクソーム解析を行うことで、ネオアンチゲンを予測するシステムも開発されました。さらに、ネオアンチゲンに反応するT細胞が100個あれば、ネオアンチゲンに反応するTCRが決定できます。現時点では、3週間で腫瘍特異的なTCR配列を明らかにすることができるそうです。この系を応用することで、従来よりも効果的なT細胞療法が行える可能性があります。がんのワクチン療法に応用した場合、先生が開発された予測システムにより、10個のうち2から3個程度のT細胞を誘導できるワクチンが見つかる、というデータもお示しいただきました。

20年前からがん免疫療法の壮大なビジョンを描いておられた中村先生。サイエンスの進歩、次世代シーケンサーの進歩が、ようやく中村先生の描かれたビジョンに追いついてきたのかもしれません。

Alt Name
会場の様子

 

Alt Name
公益財団法人がん研究会
がんプレシジョン医療研究センター所長
中村 祐輔 先生