第92回 日本細菌学会総会
イベント開催レポート

今年の日本細菌学会総会(4/23/~25)は、約20年ぶりに北海道札幌にて単独で開催されました。「今、細菌学が熱く、面白い。勝利の女神は誰に微笑むのか。」をテーマに、開催された総会は、デジタルポスターなどの新しい試みもあり盛況で、イルミナの企業展示とランチョンセミナーにも多くの方にご参加いただきました。

 

大阪大学微生物病研究所 感染症メタゲノム研究分野の中村 昇太先生に「16S解析からショットガンメタゲノミクスへ」という演題でご講演をいただきました。

中村先生の研究グループは、次世代シーケンサーを黎明期から取り入れられており、同手法の急速な変化と共に歩まれた豊富な知識と経験を多く有されています。また、そのご研究の領域も多岐にわたっております。本講演では、NGSを用いた16S 解析から、MLST、ショットガンメタゲノミクスまで各手法の有用性や注意点などについて、ご自身の研究や共同研究での実例を交えながら、様々なアドバイスをご提示いただきました。時に会場の笑いを誘う中村先生のご講演は、多くの聴講者を引き込みとても魅力的な会となりました。

例えば16S解析の項では、共同研究先である株式会社サイキンソーや阪大、血液腫瘍内科学研究室との実例を交え、核酸抽出の方法をそろえること、時系列のデータを取ること、できるだけN数を取ることを、MLSTの項では琉球大学、藤田研究室との非結核性抗酸菌症についての共同研究実例から、亜種レベルで薬剤耐性が異なるような場合、質量分析では限界があるため、NGSとショットガンゲノムデータを用いることで解像度を上げることができるが、そのためにはリファレンスゲノムデータの充実が重要である、ということをお示しいただきました。

また、ショットガンメタゲノミクスの項では阪大、粘膜免疫学研究室および遺伝統計学研究室との共同研究に加え、海外の動向も交えながら、ホスト以外からのコンタミネーションのリスクにも注意が必要なこと、ゲノム研究により菌種の同定までが飛躍的に進展した一方で、同定された菌を単離するということの重要性と困難さにも、新ためて着目がなされていることにも言及があり、本学会のテーマにある熱く、面白い細菌学に、勝利の女神が微笑んでもらうためには、ゲノム研究同様、培養研究も非常に重要であると感じました。

企業講演では、弊社の シニアアプライドゲノミクススペシャリストの小林から、GC含量による影響を受けづらく、ショットガンメタゲノミクス解析や微生物ゲノム解析に有用な Nextera DNA Flex Library Prep Kit について説明をいたしました。

当日の会場の様子