ヒト腸管内には数多くの細菌が我々とともに共生しており、複雑な生態系を構築している。DNA配列を高速に決定するシーケンサーの技術的な発展に伴い、メタゲノム解析と呼ばれる手法が登場してきた。これにより、培養を介さずに網羅的に細菌群集を解析対象とすることが可能となった。これまでは取り扱いが困難であった難培養性細菌も数多く明らかになりつつある。現在、メタゲノム解析を基盤としてヒト腸内細菌研究は大規模なコホート研究へと発展している。肥満や糖尿病、炎症性腸疾患など様々な疾患に対して、罹患時の腸内環境の状態を定義する試みがなされている。
ここでは、我々の研究グループが進めている大腸がんの罹患に伴う腸内環境の変動について紹介する。現在は大腸がん罹患時に、腸内がどのような菌叢構造を持つかを観察し、健常時との違いを明らかにすることで、大腸がんマーカーの探索を行っている。
腸内細菌が関わる可能性のある疾病はますます発見されていくことが予想される。今後は様々な疾患に対して、その罹患している状態を罹患前に近い状態に遷移させる、すなわち腸内環境の制御を試みるフェーズがくる。腸内環境の制御やデザインに向けた第一歩としての腸内環境研究を紹介したい。
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