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次世代シークエンス (NGS) 法は、今や、生命科学研究において不可欠な技術である。本ウェビナーでは、我々が開発した二つのNGS関連技術を紹介する。

(1)遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法とNGSを組み合わせたゲノム領域間・ゲノム領域-RNA間物理的相互作用解析

転写やエピジェネティック制御をはじめとするゲノム領域が持つ機能の発現制御において、当該ゲノム領域に結合している分子がそうした機能の制御を行っていることは自明と思われる。従って、ゲノム機能の発現制御機構の解明には、解析対象ゲノム領域にどのような分子が結合しているのか、を知ることが第一歩となる。我々の研究グループは、結合分子が保持されたまま特定のゲノム領域を生化学的に単離する方法として、遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法(遺伝子座特異的ChIP法)を世界に先駆けて開発した。遺伝子座特異的ChIP法は、insertional ChIP (iChIP®) 法とengineered DNA-binding molecule-mediated ChIP (enChIP®) 法の二つから構成される。iChIP®法では、解析対象ゲノム領域にLexA蛋白質等のDNA結合分子の認識配列を挿入し、そのDNA結合分子を利用してそのゲノム領域をアフィニティー精製する。一方、enChIP®法では、transcription activator-like (TAL) 蛋白質やclustered regularly interspaced short palindromic repeats (CRISPR) 系を利用して解析対象ゲノム領域をタグ付けし、アフィニティー精製を行うものである。アフィニティー精製後に、質量分析解析を行うと、解析対象ゲノム領域に結合している蛋白質が、RNAシークエンス (RNA-Seq) 法やゲノム領域に対するNGS法を組み合わせると、解析対象ゲノム領域に結合しているRNAや他のゲノム領域が同定できる。近年、ゲノム領域に結合しているRNA、特にノンコーディングRNAの機能が注目されている。また、エンハンサーやサイレンサーといった遺伝子発現制御領域とプロモーター領域との相互作用だけでなく、ゲノム領域間の相互作用を分子基盤とするゲノムの三次元構造が注目されている。前半のパートでは、これらのホットな研究分野に関する話題を提供するとともに、我々が創設したEpigeneron®社で行われている遺伝子座特異的ChIP法を用いた創薬標的同定についても紹介する。

(2) Oligoribonucleotide (ORN) interference-PCR (ORNi-PCR®) 法によるNGS解析の高精度化

遺伝子変異の検出は、ゲノム編集細胞のスクリーニング、治療法を選択するための遺伝子診断、病原性微生物の検出等、現代の生命科学・医学において不可欠であり、そのための高感度・低価格な手法の必要性は高い。我々は、点突然変異のような微小な遺伝子変異も高感度で検出することができる手法として、oligoribonucleotide (ORN) interference-PCR (ORNi-PCR®) 法を開発した。ORNi-PCR®法では、短いRNA (ORN) を用いてそれとハイブリッド形成する鋳型核酸の増幅を阻害することにより、ミスマッチを持つ変異核酸のみを増幅する。後半のパートでは、ORNi-PCR®法を利用したゲノム編集細胞検出、遺伝子変異検出、エピゲノム検出の実例を紹介するとともに、NGS解析において混入してくる望ましくない配列の除去や細菌叢解析等の高精度化について述べ、Epigeneron®社で行われているORNi-PCR®法を利用した事業について説明する。

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日時
2020/11/10
15:00 - 16:00
Location
Japan
Asia
Presenter
弘前大学大学院医学研究科 ゲノム生化学講座・教授
株式会社Epigeneron®・代表取締役社長
藤井 穂高 先生
Topic
Cellular & Molecular Biology
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