世代シークエンサーに代表されるゲノム配列解読機器の著しい発展とコストの低下により、大容量のゲノム・オミクス情報が出力される時代が到来しました。シークエンスの多くが受託解析で可能になり研究参入障壁が取り払われただけでなく、大規模バイオバンク由来ゲノムデータの一般公開、コンシューマー型企業の進出に象徴される、アカデミア型研究の枠を超えた展開など、「誰もが自分達のゲノムを知ることのできる社会」が、自律的に構築されつつあります。
遺伝統計学は、遺伝情報と形質情報の因果関係を統計学の観点から検討する学問分野です。メンデルによる遺伝法則の発見、家系例に対する連鎖解析、ヒト集団に対するゲノムワイド関連解析と、疾患感受性遺伝子の同定を軸に発展を遂げてきた遺伝統計学も、時代の潮流にあわせて更なる変革を要求されています。数百万人規模の大規模ヒト疾患ゲノム情報を大容量のオミクスデータと分野横断的に解釈し、社会還元するための学問へのニーズが高まっています。細胞組織特異性に着目した疾患病態の解明、シングルセル・ロングリード解析など新規シークエンス技術の導入、機械学習・深層学習など革新的情報処理技術の適用、ヒト集団の適応進化の解明、ゲノム情報に基づく新規創薬の試み、ゲノム個別化医療の社会実装など、遺伝統計学が今後取り組むべき課題を本講演ではご紹介したいと思います。
本邦の基礎医学研究の更なる発展に必要なのは、若手人材の育成です。特に本邦では遺伝統計学分野の人材不足が指摘されています。どうやったら若い人に、夢と希望をもって基礎医学研究の世界に参入してもらうことができるか、「遺伝統計学・夏の学校@大阪大学」の開催など、私達の取り組みもあわせて検討させて頂ければと思います。
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