希少疾患ゲノミクス

希少疾患の「diagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)」に終止符を打つために尽力しています

家族が早く診断を受けられるようにするためのヘルスケアにおける技術革新とコラボレーション

希少疾患ゲノミクスとプレシジョンメディシン

希少疾患のゲノミクスを理解することは、医師が診断未確定の疾患の原因を突き止めるのに役立ち、家族が何年にもわたり病院を訪れ不要な検査を繰り返すことを回避することにつながります。希少疾患は7,000種類以上1知られており、毎年さらに多くの疾患が発見されています。合計すると、人口の2~6%(1億5千万人超)が希少疾病に罹患しています。1–3

平均して、希少疾患の診断までに長い時間を要する「diagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)」には、5〜7年4、最大で8名の医師5、2〜3件の誤診を伴います5。希少疾患の80%が遺伝性であるか、遺伝的要素を持つことを考えると、包括的なゲノム解読により、患者の根本的な病因を明らかにできる可能性が高まります。6次世代シーケンサー(NGS)は、希少疾患診断の可能性が最も高く7–8、診断までの長い苦悩を終焉させるための最短の道を提供します。7

いかなる希少疾患も消滅することはない

名前が付けられるまでは、何も存在しません。希少疾患ゲノミクスを通じてdiagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)に終止符を打つという集団的使命の一部になりましょう。

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希少疾患診断におけるゲノミクスの価値

ゲノミクスは、希少疾患診断において、症状分析から、分子的な病因の評価へと根本的な転換を促進しています。疾患の生物学的基盤を理解することは、より良い治療とターゲット化した治療につながり、予測可能でエビデンスに基づいた結果をもたらします。このような希少疾患ゲノミクスにおける分子診断が、プレシジョンメディシンの基礎となっています。

希少疾患の分子診断は、患者やその家族、医師、その他の医療従事者にとって有益となり得る重要なステップです。米国遺伝学・ゲノム学会(ACMG)によると、個人が罹患した疾患の遺伝的病因を特定することは、患者、その家族、そして社会全体にとって有用であるとしています。9

分子解析のバックボーンとしてのゲノム

全ゲノムシーケンスが分子ゲノミクスアッセイのバックボーンとして価値を提供する理由を学びましょう。

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希少疾患ゲノミクスのメリット

適切な疾患管理

希少疾患のメカニズムを理解することで、医師は患者を適切な専門医に紹介し、適切な治療法を選択し、疾患に特異的なフォローアップができるようになります。

経費の削減

長期に渡るdiagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)を回避することで、希少疾患のゲノミック診断は、高額な検査や処置を回避し、不必要な照会を制限することにつながります。

生殖医療カウンセリング

希少疾患の遺伝パターンを明らかにすることで、患者やその家族、親近者の再発リスクを知ることができ、十分な情報に基づいた家族計画を支援することができます。

心理社会的なメリット

分子診断は、diagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)からのストレスを避けるだけでなく、希少疾患のサポートグループから成るコミュニティで関係する家族が一緒になることもできます。

社会的なメリット

希少疾患のゲノミクスを理解することは、新しい創薬ターゲットの同定や診療の効率化をサポートすることへとつながります。

希少疾病患者の体験談

CarsonとChaseの6年にわたるdiagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)に終止符を打つ

Carsonは当初、脳性麻痺と診断されていましたが、弟のChaseによってこれは誤診であると証明されました。さらに4年後、Carsonは全ゲノムシーケンスの助けを受け、Chaseはミトコンドリア・エノイルCoA還元酵素タンパク質関連神経変性症(MEPAN)であると明確にしました。

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Donovanの診断

Donovanの症状をリストしてみると、20以上の異なる病気が疑われ、十名近く専門医にかかりました。6年後全ゲノムシーケンスにより、DonovanはSKI遺伝子におけるバリアントが特定され、シュプリンツェン-ゴールドバーグ症候群と診断されました。

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希少疾患診断のためのゲノミクス手法

希少疾患の全ゲノムシーケンス

全ゲノムシーケンスは、希少疾患の検査の最も包括的な方法です。これはゲノム全体を調べ、ゲノムのコーディング領域と非コーディング領域の両方のバリアントを評価する機能を備えています。12-19

希少疾患の全エクソームシーケンス

全エクソームシーケンスでは、ゲノムのコーディング領域であるエクソンを評価し、疾患と関連するバリアントを調べます。9,10,20

希少疾患に対してターゲットシーケンスパネル

ターゲットシーケンスでは、希少疾患や希少疾患のファミリーに関連する特定の遺伝子を解析します。

染色体マイクロアレイ

染色体マイクロアレイ(CMA)技術は、そのゲノムに渡る大規模な染色体のバリエーションやよく知られた特定のバリアントを同定する技術です。

希少疾患診断のゲノミック手法の比較

診断率は、希少疾患のゲノミック検査法を比較する際に最もよく用いられる統計値です。これは、ある検査が、分子診断を確立するために必要な情報を提供する可能性を参照します。診断率は、調査する患者集団や対象基準によって大きく異なる可能性があります。

全ゲノムシーケンス

ほとんどの研究において、全ゲノムシーケンス(WGS)はすべての手法で最も高い診断率を示します。これはゲノムを広くカバーし(97%超)、複数のバリアントタイプ(1塩基変異(SNV)、Indel、構造多型、コピー数バリアント(CNV)、リピート伸長、ミトコンドリアバリアント、パラログ)を検出することができます。10-17

全エクソームシーケンス

全エクソームシーケンス(WES)は、次に高い診断率を示します。WGSと比較すると、WESはゲノムカバレッジが低く(ゲノムの約1.5%をカバー)、検出されるバリアントの種類も少なくなります。しかし、WESはWGSより安価で、一般に償還率が高くなります。7–8, 18

ターゲットシーケンス

希少疾患のターゲットシーケンスは、特定の遺伝子を評価します。最も大きなパネルでは、ゲノムの0.5%未満をカバーしています。

染色体マイクロアレイ

染色体マイクロアレイ法は、ゲノムの0.01%未満しかカバーしません。CMAは、疾患の原因となるバリアントが十分に解明されているゲノムの領域に注目するものです。CMAは、WESやWGSと比較すると、診断率がかなり低くなる傾向があります。7

全ゲノムシーケンス希少疾患カタログのカバー画像

診断の可能性を最大化する

遺伝子検査の進歩により、これまでになく迅速に回答が得られるようになっています。全ゲノムシーケンスがどのように臨床管理に影響を与え、実用性を向上させるようになったかを学びます。

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オンラインコース:希少疾患における臨床シーケンス

このコースは、小児希少疾患の概要、利用可能な検査オプション、ゲノムシーケンスの臨床導入について解説します。これは、希少疾患患者におけるゲノミクスのレビューに関心のあるラボプロバイダー、医療従事者、医療機関、その他の方々に関連するでしょう。このコースは、イルミナからの教育助成金により実現しました。

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希少疾患ゲノミクスに関する注目のニュース

iHopeプログラムがアクセスを拡大

遺伝性疾患患者を抱える家族の公平性を高め、臨床転帰を向上させるためのグローバルな取り組み

Project Baby Bear(プロジェクト・ベビーベア)の成果

集中治療室にいる乳児を対象としたパイロットプログラムにより、臨床転帰が改善され、ケア体験が向上し、総医療費が削減されました。

遺伝性疾患が疑われる急性期乳児の臨床管理に与える全ゲノムシーケンスの影響

ランダム化臨床試験

全ゲノムシーケンスによる重症乳児のケアの改善

5つの小児病院を対象としたランダム化開始遅延デザインによるNICUSeq試験について学びます。このウェビナーでは、急性期医療環境に役立つ診断全ゲノムシーケンスを実装するための重要な調査結果と考慮事項について解説します。

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プレシジョンゲノミクスが希少疾患に与える影響

Limbo Landからの脱出

このポッドキャストエピソードでは、Syndromes Without A Name (SWAN) AustraliaのHeather Renton氏が、彼女の娘の希少疾患、それにまつわるdiagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)、そしてNGSの影響について話します。

イルミナからの「A Message of Hope(希望のメッセージ

COVID-19は、希少疾病に直面する家族にさらなる困難をもたらします。当社は、このような希少疾患コミュニティの負担を認識しており、diagnostic odyssey(診断をつけるための終わりのない旅)の終焉を目指して引き続き尽力していきます。

ある母親の診断への探求

Shubaoは幼い頃、高血圧を患っていました。全ゲノムシーケンスにより、PDHX遺伝子の両コピーに変異があることが判明し、オーダーメイド治療が行われることになりました。彼はほぼ即効性のある改善が見られました。

参考文献
  1. Nguengang Wakap, S., Lambert, D.M., Olry, A. et al. Estimating cumulative point prevalence of rare diseases: analysis of the Orphanet database. Eur J Hum Genet. 2020;28:165–173. https://doi.org/10.1038/s41431-019-0508-0
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