心血管疾患の研究

ゲノミクスによる心血管疾患研究の進歩

次世代シーケンサーとマイクロアレイの手法とツール

心血管ゲノミクス研究者

心血管疾患研究のための強力なツール

次世代シーケンサー(NGS)とマイクロアレイは、さまざまな遺伝子や遺伝子バリアントが心血管疾患にどのように影響するかを明らかにするための強力なツールです。NGSによる進歩は、心疾患研究者が利用できるゲノミクスツールとアプリケーションの範囲の拡大によりもたらされます。1つの遺伝子またはバリアントの発見でさえ、心血管疾患の複雑な性質に対する膨大な洞察を明らかにすることができます。

イルミナシーケンスハブPRS

ポリジェニックリスクスコアによる心血管疾患リスクの推定

ポリジェニックリスクスコア(PRS)は、特定の形質または疾患に対する個人の遺伝的リスクの推定値です。PRSは多くの一般的バリアントの影響を集約し定量化することで得られます。通常のスクリーニング方法に加えてPRSを活用することで、本来見逃される可能性があった冠動脈疾患(CAD)のリスクがある個人を特定するのに役立ちます1

ChIP-Seqワークフロー

DNAシーケンスの変異を超える

エピジェネティクスは、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、およびリン酸化によってDNA、RNA、およびヒストンのレベルで遺伝子発現を制御するゲノムに発生する化学的修飾の研究です。エピジェネティクスに基づく治療法、すなわちエピドラッグは、治療オプションの可能性を求めて探求され開発され続けています。心不全の治療に使用される既存薬の中には、スタチン、メトホルミン、アプレソリン、SGLT2阻害薬など、エピジェネティックな作用が知られているものがあります2

NGSタンパク質解析

NGSおよびタンパク質解析

プロテオミクスは、タンパク質の構造、機能、制御に関する研究です。プロテオミクスにおけるNGSを用いたアッセイは、バルク細胞集団で、またはシングルセルレベルでさえ、遺伝子とタンパク質の間の機能上の関係をより詳しく理解するために使用できます。場合によっては、このアプローチにより、研究者は保存組織の状況下でこれらの関係を研究することができます。

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マルチオミクスで探索力が何倍も向上します

マルチオミクスを使用して、遺伝型と表現型のマッチング精度を高め、単一のオミクスアプローチでは得られない完全な細胞のリードアウトを取得する方法をご覧ください。

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WGS研究の探索

全ゲノムシーケンスによる心血管疾患研究の向上

全ゲノムシーケンス(WGS)は、全ゲノムを解析するための強力で包括的なツールであり、心臓病などの遺伝性疾患を特定することを可能にします。このアプローチでは、以前の遺伝子検査で判別できない、または陰性であった原因遺伝子バリアントが発見されました3、4。WGSは、1塩基変異、挿入/欠失、コピー数変化、および構造バリアントを検出する将来のアプリケーションへの道も開きます。

WGSの詳細はこちら

TruSight One拡張シーケンスパネル画像
主な製品
TruSight One拡張シーケンスパネル

TruSight One拡張シーケンスパネルは、多様なアッセイポートフォリオを管理するためのソリューションを手頃な価格で臨床基礎研究室に提供します。このアッセイでは、18の遺伝性心疾患(ICC)およびエクソームの他の疾患関連領域に関連する181の心臓遺伝子をシーケンスします。研究者は、パネル上の全遺伝子の解析することも、特定のサブセットの解析に集中することもできます。1回のアッセイで、ラボは既存メニューを拡張したり、ワークフローを合理化したり、またはシーケンスのオプションの全ポートフォリオを作成したりできます。

TruSight One拡張シーケンスパネルでカバーされる心臓疾患*
不整脈
  • 家族性心房細動(21)
  • QT延長症候群(15)
  • ブルガダ症候群(13)
  • CPVT:カテコラミン誘発多形性心室頻拍(6)
  • QT短縮症候群(4)
心筋症
  • 拡張型心筋症(59の遺伝子をカバー)
  • 肥大型心筋症(50)
  • ARVC:不整脈源性右室心筋症(11)
  • ヌーナン症候群(11)
  • 非コンパクション型心筋症(10)
  • 収縮性心筋症(9)
大動脈疾患
  • 家族性大動脈瘤(16)
  • 遺伝性胸部大動脈解離(4)
  • ロイズ・ディーツ症候群(4)
  • 大動脈弁疾患(3)
  • マルファン症候群(3)
その他の心臓疾患
  • 構造的心疾患(15)
  • 家族性高コレステロール血症(10)

*数字は、TruSight One拡張パネル上の関連遺伝子数を表します。

ソートリーダーシップ

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注釈
  1. Mujwara D, Henno G, Vernon ST, et al. Integrating a Polygenic Risk Score for Coronary Artery Disease as a Risk-Enhancing Factor in the Pooled Cohort Equation: A Cost-Effectiveness Analysis Study(冠動脈疾患に対するポリジェニックリスクスコアをプールコホート方程式におけるリスク強化因子として統合:費用対効果の解析研究). J Am Heart Assoc. 2022;11(12):e025236. doi:10.1161/JAHA.121.025236
  2. Gorica E, Mohammed SA, Ambrosini S, Calderone V, Costantino S, Paneni F. Epi-Drugs in Heart Failure(心不全におけるエピ薬物). Front Cardiovasc Med. 2022;9:923014. 2022年7月13日発行。doi:10.3389/fcvm.2022.923014
  3. Kalayinia S, Goodarzynejad H, Maleki M, Mahdieh N. Next generation sequencing applications for cardiovascular disease(心血管疾患への次世代シーケンシングの応用). Ann Med. 2018;50(2):91-109. doi:10.1080/07853890.2017.1392595
  4. Bagnall RD, Ingles J, Dinger ME, et al. Whole Genome Sequencing Improves Outcomes of Genetic Testing in Patients With Hypertrophic Cardiomyopathy(全ゲノムシーケンスは肥大型心筋症患者の遺伝子検査の結果を改善). J Am Coll Cardiol. 2018;72(4):419-429. doi:10.1016/j.jacc.2018.04.078