2022年12月14日(水)-17日(土)、パシフィコ横浜 会議センターにて、日本人類遺伝学会第67回大会が開催されました。「Back to Basics!」をテーマに、1,500人の来場者を集めて盛会裏に終了しました。イルミナは、企業展示とランチョンセミナーで参加しました。
ランチョンセミナーでは、座長に東京都立小児総合医療センター 遺伝診療部 吉橋博史先生、演者に慶應義塾大学 医学部 小児科 武内俊樹先生をお迎えし、「臨床実装を目指した網羅的ゲノム解析」をテーマにご講演いただきました。
本セミナーの冒頭には、弊社技術営業の佐二木健一より世界的なクリニカルシーケンスの動向、また価格面、ソリューション面などワークフロー全体を視野に入れて実施した製品改善と最新のポートフォリオを紹介しました。
武内先生には「超高速解析系を用いた重症新生児に対する迅速なゲノム診断アプローチ」というタイトルでご講演いただきました。
初めに、約2万の全遺伝子のうち確立された疾患原因遺伝子の割合、エクソーム解析と全ゲノム解析それぞれで見ることが可能な変異(点変異、構造異常)をわかりやすくイメージ図でお示しいただきました。
そのうえで、武内先生が研究代表者を務めるPriority-i(新生児集中治療室における精緻・迅速な遺伝子診断に関する研究開発)プロジェクトの結果から考察される疾患パネル(TruSight™ One)、エクソーム解析、全ゲノム解析の有用性をお示しいただきました。
また、このプロジェクトで使用されたイルミナが提供する二次解析ソフトウェア(DRAGEN™)の利点として、カスタマイズの自由度を残しつつも大幅な解析時間の短縮(汎用サーバー 263分⇒DRAGEN 43分)が可能であること、かつ豊富な解析パイプラインを有するパッケージ化されたソフトウェアであることを挙げられました。加えて過去に評価いただいた解釈ツール(TruSight™ Software Suite 現Illumina® Connected Insights – Germline)については、ネット環境があればノートPCのみで、複雑なコマンドラインを打ち込む必要なく視覚性が高い変異解析が可能である点にも触れていただきました。
ご講演の中では、全ゲノム解析による構造異常検出による診断例もいくつかご提示いただきました。全ゲノム解析は、マイクロアレイやエクソーム解析等では検出が難しい単一エクソンの欠失など数kbから数十kb程度の「小さい構造異常」の検出が可能であることから、データを解釈するうえで各解析法(染色体検査~次世代シーケンサー)が見ることができることのスケール感や解析の順序および求められる精度、迅速さ、費用などを考慮して臨床実装を検討する必要性を明示いただいた大変有意義なセミナーでありました。
国内では重症の新生児と生後6 か月以下の乳児に対しゲノム解析を実施した85 人の患者のうち、41 人(48%)で遺伝学的診断※に至り、そのうち20 人(49%)では、診断が診療方針の決定に有用でした。その中にはWGS で検出可能なコピー数変異により診断に繋がったケースもありました。
※ Priority-i という研究プロジェクト内で用いられている学術的用語、新生児疾患の原因遺伝子変異を特定する研究内プロセス
新生児集中治療室における次世代シーケンサーによる診療貢献の試み
Suzuki H, Nozaki M, Yoshihashi H et al. Genome Analysis in Sick Neonates and Infants: High-yield Phenotypes and Contribution of Small Copy Number Variations J. Pediatr.(2022) https://doi.org/10.1016/j.jpeds.2022.01.033