感染症診断の現場においては、日頃から柔軟かつ即応性のある検査手法が求められています。本ウェビナーでは、この分野において第一線を走る長崎大学病院から2名の先生方をお招きして、ご講演いただきます。第一演題では、微生物検査における従来法を補完する新しい技術の進展と役割について、第二演題では微生物のゲノム解析を用いた同定困難菌種の同定や薬剤耐性菌の感染経路の推定など、NGSの活用事例と可能性をご紹介いただきます。
NGSを扱ったことがない方には、本ページ下部の2つの導入編ウェビナー録画を事前にご視聴いただくと、本ウェビナーをよりお楽しみいただけます。
ご講演1
長崎大学大学院 病態解析・診断学分野(臨床検査医学) 教授
栁原 克紀 先生
『感染症検査におけるLDTの役割』
感染症検査におけるLDT(検査室開発検査)は、従来検査の限界を補い、迅速かつ柔軟な対応を可能にする重要な手段である。従来の培養や同定といった検査法は、病原体の種類によっては時間を要したり、検出が困難であったりするという課題がある。特に、培養が困難なウイルスや、複数の病原体が混在する感染症の診断には限界があった。 このような中、コロナパンデミックではLDTとして核酸増幅検査、特にRT-PCR法が急速に普及した。公的な検査体制が整うまでの間、多くの医療機関が独自に検査法を開発・実施し、感染拡大の初期段階における診断と隔離に大きく貢献した。この経験により、LDTの迅速性と柔軟性が広く認識されるようになった。 さらに、次世代シーケンサー(NGS)の普及により、LDTの活用は新たな段階に入っている。NGSを用いた網羅的な遺伝子解析により、原因不明の感染症の病原体特定や、変異株の検出、複数病原体の同時同定が可能となり、従来検査では不可能であった情報が得られるようになった。これは診断精度の向上だけでなく、公衆衛生上のリスク評価にも寄与している。 今後もLDTは、感染症検査のフロントラインにおいて、従来検査と補完的に機能しながら、技術革新とともに進化し続けることが期待される。特に、迅速な対応が求められる新興感染症への対応力を高めるうえで、その重要性はますます増している。
ご講演2
長崎大学病院 検査部 遺伝子検査室 主任
村田 美香 先生
『感染症領域におけるNGSの活用 』
NGSは莫大かつ網羅的なデータ解析を特徴とし、がん領域ではすでに治療薬の選択や、安全性・有効性の評価に活用されている。一方で感染症領域においては、まだ日常的な検査としては導入されていないが、今後は「原因微生物の検出・同定」「病原微生物のタイピング・病原性遺伝子や薬剤耐性遺伝子の解析」「感染制御(系統解析・伝播経路の推定)」など多方面での活用が期待される。
当院の検査室では院内外より臨床菌株の解析を依頼され、NGSを用いることもしばしばあるが、特に薬剤耐性菌のアウトブレイク(院内伝播)が疑われた際の、菌株の相同性解析においてはNGSが有用であると考えている。NGSを用いて行われるコアゲノムMLSTやSNP解析を活用することで、真の院内伝播株の抽出が可能となり、感染経路の推定が行いやすくなることが期待される。
本ウェビナーでは我々の検査室でのNGSの活用方法および、データ解析を行う際の課題について紹介したい。
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