構造バリアント検出

効率的な構造バリアント検出のためのNGSソリューション

構造バリアントとは?

構造バリアント(SV)とは、長さが50塩基対(bp)以上のゲノムにおける大きな変化を指します。これにより、ゲノム構造やコピー数、ゲノム内のDNAセグメントの位置が変化し、遺伝子の機能や発現制御に影響を及ぼす場合があります。構造バリアントの主なタイプには、欠失、挿入、重複、逆位、転座が含まれます。これらのゲノムの変化は、疾患やがんの発生に関連しています。1 イルミナは、従来のライブラリー調製ステップを効率化し、包括的な構造バリアント検出、可視化、レポート作成を実現する、非常にシンプルな次世代シーケンサー(NGS)ソリューションを提供します。

Profile image of a male scientist examining a 25B flow cell cartridge before inserting into a NovaSeq X drawer.

希少疾患と腫瘍学における構造バリアントの影響

短いIndel(挿入と欠失)や1塩基変異(SNV)に比べて、SVはより多くの塩基に影響を及ぼし、その結果、遺伝子発現制御機構や遺伝子量、表現型に影響を与える可能性があります。染色体構造の異常は、表現型の変動や疾患感受性に直接関与する重要な遺伝的変異の1つです。2 研究者はNGSを用いて、DNAが切断されるブレークポイントや、切断されたDNAの末端を示すブレークエンドを検出することができます。この検出から得られるデータは、希少疾患やがんに関連する複雑なゲノム再構成の解明に大きく貢献しています。3

構造バリアントの検出方法

構造バリアントは、NGSまたはマイクロアレイ技術、専用のSVコーラー、および全ゲノムシーケンス(WGS)、ターゲットシーケンス、染色体マイクロアレイ解析(CMA)などの確立された手法を使用して、多様なサンプルタイプにわたって検出されます。4

手法 定義 主な利点 使用上の考慮事項
近接マップリードテクノロジーによる全ゲノムシーケンス WGSと近接マップリードテクノロジーの組み合わせにより、包括的かつ高精度でシンプルなバリアント検出が実現し、新たな洞察の獲得を導きます 簡効率的なオンフローセルライブラリー調製ワークフローは、ショートリードシーケンスの容易さと精度を兼ね備え、マッピングが困難なゲノム領域の解明を可能にするとともに、SV検出を向上させ、フェーズドリードおよびバリアントコールを生成します 近接性情報を用いるため、従来のWGS法よりも高い信頼性を実現し、曖昧なゲノム領域へのアクセス性を向上させるとともに、より正確なマッピングを可能にします
全ゲノムシーケンス (WGS) コーディング領域とノンコーディング領域を含む、ゲノムの包括的なシーケンスカバレッジを提供します 最も包括的な手法:1塩基多型(SNP)、Indel、コピー数バリアント(CNV)、バランス型のSVなど、すべてのバリアントタイプを検出します ゲノム全体の高解像度ビューが得られる一方で、ターゲットパネルよりも多くの計算リソースが必要です。新規ユーザーにとってWGSデータ解析は難しく感じられるかもしれませんが、直感的に使用できるNGSデータ解析ツールの活用により、このような不安は軽減されます
ターゲットシーケンス エンリッチメントまたはアンプリコンベースのキャプチャーを使用して、特定のシーケンスを分離し、遺伝子パネルやエクソームなどの関心領域に焦点を当てます 迅速なターンアラウンドとデータ負荷軽減により、特定の関心領域内で高いシーケンス深度と検出を実現します あらかじめ定義されたターゲット領域内でのSV検出に限定されており、反復領域またはノンコーディング領域のブレークポイントではギャップが生じます
染色体マイクロアレイ解析(CMA) ゲノム全体の遺伝物質の喪失または獲得を検出するために、特定のプローブへのDNAサンプルのハイブリダイゼーションに依存しています 重複や欠失などの大規模CNVを検出するための、高感度かつ確立された手法です 小さなIndel、新規SV、およびバランスの取れた再構成(逆位および転座)を検出できないため、主に既知のゲノム領域の解析に使用されます

構造バリアント検出のためのイルミナのソリューション

イルミナのハイスループットソリューションは、ライブラリー調製からシーケンス、データ解析、解釈まで、信頼性の高い構造バリアント(SV)検出をサポートします。SV検出のための近接マップリードテクノロジーは、困難なバリアントやゲノム領域の解明を可能にする高いマッピング能力と、実績あるスケーラブルなシーケンスケミストリーを組み合わせています。これらの能力により、遺伝性疾患、腫瘍学、マルチオミクス、感染症、集団ゲノミクスなど、多様な研究領域において効率的で柔軟なソリューションを提供し、SV解析および解釈の効率向上に貢献します。

サムネール

SV検出のための近接マップリードテクノロジー

近接マップリードテクノロジーが、どのようにして元の長いDNAテンプレートと短いシーケンスリードの関連性を維持し、構造バリアントの検出を強化するかをご覧ください。

構造バリアント検出ワークフロー

1
ライブラリー調製
2
シーケンス
3
解析

効率的なSV検出:DRAGENパイプラインの利点

従来の単一リファレンスへのアライメントでは、ゲノムの複雑な領域や高度に多型性を示す領域において、バリアントが検出されない可能性があります。DRAGENマルチゲノムは、複数のリファレンスに対してアライメントを実行します。さらに、スケーラブルなIllumina NGSシステムと組み合わせることで、DRAGENマルチゲノムマッピングは、マッピングが困難な領域における分解能を向上させ、バリアント検出数の増加に貢献します。5 SVコール精度の向上から腫瘍学研究向けの合理化されたプッシュボタン解析に至るまで、最新のDRAGEN二次解析の進展をご覧ください。

主なリソース

がん全ゲノムシーケンス

がんWGSソリューションは、ライブラリー調製、シーケンス、およびデータ解析からSV、染色体変化、体細胞バリアントなどの検出に役立ちます。

集団ゲノミクス

NGSテクノロジーへのアクセスを拡大を目指して、大規模なゲノムデータセットの生成を実現し、ヘルスケア分野におけるイノベーションを促進する、シーケンスおよびインフォマティクスソリューションです。

構造バリアントに関するよくある質問

すべてのコピー数バリアントは構造バリアントに含まれますが、構造バリアントファミリーの範囲はコピー数の変化にとどまらず、さより多様な変異を含みます。欠失、挿入、重複はコピー数バリアントの代表例であり、遺伝物質の純増または純減を伴うため、不均衡型の構造バリアントに分類されます。一方、逆位や転座などのバランス型の構造バリアントは、DNAの総量を変化させることはありません。6

 コピー数バリアント解析の詳細はこちら。

構造バリアントは、ゲノム内のDNAを変化させる方法によって定義され、最小サイズは50 bp以上の長さです。SVの種類には以下のものがあります。

  1. 欠失:欠失により、元のリファレンスゲノムからゲノムDNAが除去され、制御要素や遺伝子が破壊される可能性があります。
  2. 挿入:挿入はゲノムにDNAを付加し、コード配列を破壊したり、遺伝子発現を変化させたりする可能性があります。
  3. 重複:重複によりゲノム領域の余分なコピーが生じ、遺伝子量を増加させ、遺伝子の過剰発現につながり、発達症候群などの障害に寄与します。
  4. 逆位: 逆位はゲノム内のDNAセグメントを反転させ、その方向を逆転させる現象であり、逆位箇所で遺伝子を破壊したり、遺伝子制御を阻害する可能性があります。 
  5. 転座:転座はDNAをある染色体から別の染色体に移動させます。このような移動は融合遺伝子を産生し、制御領域を破壊し、一般的に染色体障害やがんと関連しています。1

はい、イルミナNovaSeq Xシーケンスシステム、近接マップリードテクノロジー、およびグラフベースのアライメントとコーラーを使用するDRAGEN二次解析バイオインフォマティクスパイプラインは、SV検出に優れています。

近接マップリードテクノロジーの詳細はこちら

SV検出機能を備えた当社のNovaSeq XシーケンスシステムDRAGEN二次解析をご覧ください。

SVはサイズや構成が多様であり、SVの種類によってリード深度の要件が異なることから、構造バリアントの検出は困難とされています。さらに、SVコーラーごとに精度や感度に差があることも課題です。こうしたSVの多様性とSVコーラー間のばらつきが相まって、特に標準的なリード深度ベースのアプローチでは、シーケンスおよび計算手法によるSV検出が一層難しくなっています。7

オンフローセルライブラリー調製と新しいインフォマティクスを活用してSV検出を強化する近接マップリードテクノロジーをご覧ください。

SV検出解析を合理化するためのDRAGEN二次解析パイプラインについてご覧ください。

ショートリードシーケンスは、高精度な全ゲノムシーケンスを実現する、柔軟で信頼性の高い手法を提供しますが、SVなどの特定の領域やバリアントタイプの解析においては限界があります。一方、ロングリードシーケンスは、より大規模で複雑なゲノム領域にわたって連続性を確保するため、SVの解明に有効ですが、依然として精度面での課題があり、結果のばらつきやワークフローの煩雑化といった傾向があります。8–11

ショートリードシーケンスの容易さと精度を兼ね備えた近接マップリードテクノロジーを活用することで、研究者はSV検出を向上させるとともに、従来はマッピングが困難であったゲノム領域を解明できるようになります。

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参考文献

  1. Collins RL, Talkowski ME. Diversity and consequences of structural variation in the human genome. Nat Rev Genet. 2025;26(7):443-462. doi:10.1038/s41576-024-00808-9 
  2. Pande S, Dawood M, Grochowski CM. Structural Variants: Mechanisms, Mapping, and Interpretation in Human Genetics. Genes (Basel). 2025;16(8):905. Published 2025 Jul 29. doi:10.3390/genes16080905 
  3. Meng X, Wang M, Luo M, Sun L, Yan Q, Liu Y. Systematic evaluation of multiple NGS platforms for structural variants detection. J Biol Chem. 2023;299(12):105436. doi:10.1016/j.jbc.2023.105436 
  4. Austin-Tse CA, Jobanputra V, Perry DL, et al. Best practices for the interpretation and reporting of clinical whole genome sequencing. NPJ Genom Med. 2022;7(1):27. Published 2022 Apr 8. doi:10.1038/s41525-022-00295-z 
  5. Behera S, Catreux S, Rossi M, et al. Comprehensive genome analysis and variant detection at scale using DRAGEN. Nat Biotechnol. 2025;43(7):1177-1191. doi:10.1038/s41587-024-02382-1 
  6. Du H, Lun MY, Gagarina L, et al. An integrated platform for concurrent structural and single-nucleotide variants improves copy-number detection and reveals pathogenic alleles in undiagnosed Mendelian families. Genome Med. Published online December 31, 2025. doi:10.1186/s13073-025-01593-8 
  7. Liu Z, Roberts R, Mercer TR, Xu J, Sedlazeck FJ, Tong W. Towards accurate and reliable resolution of structural variants for clinical diagnosis. Genome Biol. 2022;23(1):68. Published 2022 Mar 3. doi:10.1186/s13059-022-02636-8 
  8. Pacific Biosciences. Preparing DNA for PacBio HiFi sequencing—Extraction and quality control. pacb.com/wpcontent/uploads/Technical-Note-Preparing-DNA-forPacBioHiFi-Sequencing-Extraction-and-Quality-Control.pdf.
Published 2022. Accessed December 8, 2025. 
  9. Pacific Biosciences. Preparing whole genome and metagenome libraries using SMRTbell prep kit 3.0. pacb.com/ wp-content/uploads/Procedure-checklist-Preparing-wholegenomeand-metagenome-libraries-using-SMRTbell-prepkit-3.0.pdf. Published 2022. Accessed December 8, 2025. 
  10. Oxford Nanopore Technologies. Ligation Sequencing Kit. store.nanoporetech.com/us/ligation-sequencing-kit-v14.html. Accessed December 8, 2025. 
  11. Pacific Biosciences. Low Yield Troubleshooting Guide. pacb.com/wp-content/uploads/Guide-Low-Yield-Troubleshooting.pdf. Published 2018. Accessed December 8, 2025.