一貫した方法の高度なシーケンスを活用するオーストラリアの作物育種研究
要約
概要:
Agriculture Victoriaの分子遺伝学チームは、ハイスループット遺伝子解析を用いてオーストラリアの作物育種家を支援しています。
課題:
作物の育種では、重要な品種の形質に寄与する複数の遺伝子を効率的に同定することが必要とされています。
解決法:
Infinium XT high density multi-species SNP chipテクノロジー。
利点:
Agriculture Victoriaチームは、一度に最大50,000個のSNPを確実にスキャンして、作物育種家が育種プログラムで複雑な形質を確実に検出するのをサポートします。
Noel Cogan博士は、メルボルンにあるラトローブ大学のアグリバイオサイエンスセンターAgriBioを拠点とするAgriculture Victoriaの分子遺伝学チームのリーダーです。
はじめに
Noel Cogan博士は、メルボルンにあるラトローブ大学のアグリバイオサイエンスセンターAgriBioを拠点とするAgriculture Victoriaの分子遺伝学チームのリーダーです。
このチームは、小麦、大麦、キャノーラ、レンズ豆、エンドウ豆などの主要な農作物の育種家を含む、オーストラリアの全農業部門のために遺伝学研究を実施しています。
Agriculture Victoriaのラボでは高度なゲノムシーケンスシステムが複数使用されており、その中にはイルミナの大型 NovaSeq 6000 システム が1台、小型MiSeq システムが2台、高度に自動化された iScan システムが1台含まれています。
Cogan博士のチームではこれらのシステムにより、さまざまな規模のシーケンス能力や革新的なSNP(一塩基多型)チップスキャンが必要な研究やイノベーションのサービスを提供することができています。
新システムがスループットを加速
10年弱前は、AgriBioのCogan博士のチームでは1年あたり50兆ヌクレオチドのDNAデータを生成していました。新しくなったイルミナシステムでは、現在1日あたり4兆ヌクレオチドを生成できます。
この進歩は、新種開発する際の作物育種家の時間を節約し、精度を向上できるので、オーストラリアの穀物業界にとって特に喜ばしいことです。
効率を高めるイルミナの一貫性
研究者たちは、これまでの最大100倍のスピードで作物のゲノムを解析できますが、イルミナが長年にわたって一貫したサンプル調製法を維持してきたことも作業を向上させています。
「Infinium XTのような新たなプラットフォームを使用することで、わずかな時間とわずかなコストではるかに多くのデータを得ることができるため、私たちの植物科学の知識は向上し続けています。」
Cogan博士によると、Agriculture Victoriaのラボの技師たちの使用しているシステムが大きく変わったとしても、慣れた方法でのサンプル調製が可能とのことです。これによりラボの作業効率が高まり、過去の研究の積み重ねができるようになりました。
「10年前に調製された穀物や葉のサンプルを最新のシーケンサーで使うことができるのです。」と述べています。
「サンプルのシーケンスや解析を再度実施し、これまでは時間や費用が掛かり過ぎて取得できなかった新しいデータを生成できる大きな柔軟性が得られました。」
スピード、精度、信頼性をもたらすSNPチップ
Cogan博士によると、SNPチップにより研究チームはゲノムを迅速かつ特異的に調べることができるようになったため、非常に高い時間効率とコスト効率で多数のサンプルを処理できるようになったとのことです。
スループットの向上に伴い、遺伝子解析にかかるコストは急落し、生産者の持続可能な商業的改善を実現するために作物育種家が投資しなければならない時間とコストが大幅に削減されました。
「私たちの使っているイルミナのInfinium XT high density multispecies chipでは、1回のスキャンで最大100,000個のゲノム特性を解析できます。」と述べています。
「また、Intergrainとともに一度に40,000個のSNPを確実にスキャンできる小麦と大麦用の複合チップや、Grains Research and Development Corporation (GRDC)とともにレンズマメ、ヒヨコマメ、フィールドピー、ハウチワマメの30,000個のSNPをスキャンできる多種豆類用SNPチップを開発しました。」
オーストラリアの作物育種家の業績改善
Cogan博士は、農業において関心のある形質の大半は1つや2つの遺伝子間ではなく多くの異なる遺伝子間の相互作用により制御されているため、高速スキャンは作物育種家の利益になると述べています。ゲノム内でこれらの遺伝子の位置を効率的に見つけて同定できることは、作物育種を成功させるカギです。博士は、例としてキャノーラの黒あし病抵抗性を取り上げ、この深刻な病害に対する抵抗性の遺伝学的根拠は、主な効果を有する一部の遺伝子に制御されているが、その他の多くの遺伝子も全体的な形質に寄与していることを説明します。
このような多様な遺伝子間の相互作用により、植物の総合的な病害抵抗性が説明されます。
「ゲノム解析の継続的な進歩のおかげで植物育種家は、さらに強靭で生産性の高い作物をより効率的に開発することができます。」
「すべての黒あし病抵抗性遺伝子は有効な全遺伝的抵抗性の約3分の1を占めていることがこれまでの歴史の中で同定されていると考えています。」と博士は述べています。
Cogan博士によると、これはつまり、最先端のシーケンス法やジェノタイピング法を使えばキャノーラのゲノム内から、これから利用できる遺伝的抵抗性の大きな供給源がまだ眠っているということを意味している、とのことです。
「これまでは、この供給源にアクセスするテクノロジーがありませんでした。」と博士は述べています。
本事例紹介で取り上げられている製品およびシステムの詳細はこちら:
イルミナ NovaSeq 6000 システム
jp.illumina.com/novaseq
イルミナ iScan システム
jp.illumina.com/iScan
イルミナマイクロアレイテクノロジー
jp.illumina.com/science/technology/microarray.html
イルミナ Infinium XT マイクロアレイソリューション
jp.illumina.com/products/by-type/microarray-kits/infinium-xt.html